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日常の診療で、奇応丸について、よくたずねられる。奇応丸は救命丸とならんで、動植物性和漢薬であり、薬事法のよって承認されている。医薬品には病院や診療所で用いられる医療用医薬品と市中の薬局で売られている一般用医薬品があり、これらをあわせると、四万種以上にもなるが、そのうち一万六千種が一般薬で、奇応丸もその一つということになる。
奇応丸には約30銘柄があり、この中歴史的にも古いものは「○屋奇応丸」で、三百年も前から使われている。さて、奇応丸の成分はオゴウ(牛黄)、ジャコウ、ユウタン(熊胆)、ニンジン、ジンコウ(沈香)の五種で、剤形は小粒(米粒の九分の一)で苦みはなく、赤ちゃんでも飲ませ易くできている。
奇応丸の使い方を筆者なりに考えてみると、効能書きには小児の神経質、かんむし、夜泣き、かぜひき、ひきつけ、めびえ、下痢、乳はき、食欲不振、胃腸虚弱とあるが、髄膜炎や脳炎に伴うけいれんやてんかん、などに使うのは不適当である。また急性の乳児下痢症も対応を急がなければならない場合が多いことを考えると、西洋医学的な治療を優先すべきである。夜泣きや息止め発作などを示す、かんの強いこども、神経質児に対しては、西洋医学の領域でも、有効な方法が見あたらない場合もあり、このような場合に奇応丸などを試すのが良いのではないかと考える。すぐには効果のみられないこともあり、一カ月ほど服用を続けてみることだ。
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少子化時代が続いている。からだの発育よりも、心の問題が大きくなってきている。つまりこどもの健診も今までのような集団方式では身体発育が重視され、こどもの心に触れることは難しい。こどもの環境も以前とは変わってしまった。戸外で遊びの実体験をすることが減り、テレビ、ゲーム、塾が生活の中心となっている。
少子化社会では母親がこどもをかまい過ぎ、これがこどもの自立を遅れさせて、アダルトチルドレンをつくることとなる。一方世の中が豊かになったため、欲しい物がすぐ手に入り、我慢をして待つことができないこどもが多くなり、ストレスに弱い子、きれやすい子が増えている。
情報化社会はパソコン、ゲーム機器を発達させ、ゲームや機器の得意なこどもが大人に機器の扱いを教え、これが親や先生の立場や権威を崩しているとも言える。
他人への思いやりは大切なことだが、兄弟が少なく、核家族の家庭では人と人との付き合いが減り、他人との接し方が下手になったと思われる。思いやりは人だけでなく、動物や植物にも愛情をそそぐよう、小さなこどもに教え、育てたいものだ。
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アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などで代表される、いわゆるアレルギー疾患はいずれも経過の長い慢性の疾患であり、治療に困難を感ずることが少なくない。またこれらの疾患はいわゆるアレルギー体質(アトピー素因)を有するこどもに発症することが多い。そして大勢の、アレルギー疾患のあるこどもを詳細に検討、分析したところ、これらのアレルギー疾患が一つの流れのように、次から次へと臓器や病型を変えて発症していく現象をとらえ、アレルギーマーチと名付けられるようになった。
先ずアトピー性皮膚炎や湿疹が乳児期早期に食物アレルゲンや吸入アレルゲン(ダニなど)に感作して発症する。次いで気管支喘息の90%が六歳までに発症する。花粉症、アレルギー性鼻炎は幼児期から起こり、やや遅れてアレルギー性結膜炎が発症する。
これらのアレルギーマーチから外れるには、食物抗原を除去し、吸入抗原を遠ざけ、適切な治療を受ける必要がある。アレルギー疾患の中にはアウトグロウと称して、いつの間にか治るものもある。
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柑皮症は、以前はミカンを多く食べる冬季に限られていたが、最近ではカロチンの多いニンジンジュースなどの影響もあるのか、季節を問わず見受けられるようになった。柑皮症という名前はベルツという人が、ミカンなどをたくさん食べたこどもの皮膚が黄色くなっているのに気づいてつけられた症状名である。黄疸ではないかと心配して医者に診察を求められる母親も多い。
母乳栄養の赤ちゃんでは、母親の摂取食品によって、母乳のカロチノイド色素含量が増加し、そのために赤ちゃんの皮膚が黄色くなることがあり、鼻のまわりに黄染が目立つ。幼児以上になると、手のひら、足のうら、鼻翼の順に黄染がみられ、眼球鞏膜(しろ目)の黄染はない。そして皮膚の黄染は、その程度にもよるが、消失に1~3カ月を要する。
カロチノイド色素の多い食品はミカン、ニンジン、カボチャ鮭肝油、ウニ、赤色ヤシ油などのほか、スイカ、トマトの赤い色もカロチノイド色素である。カロチノイド色素のあるものはビタミンAに変化する。このようにカロチノイド色素の多い食品を多く摂取すると、個人差はあるが、柑皮症(カロチン血症)になるが、幸いなことに肝臓病やビタミンA過剰症になる心配はないと言われている。
大切なことは、柑皮症に気づいたらカロチノイド色素の多い食品摂取の偏りを改めることである。
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最近の総務庁の調査によると、ファミコンの普及率は目覚ましいものがあり、何千万台が家庭に入っている。こどもにコンピューターゲームを続けていると、どうなるかと聞くと、目がチラチラする。目がかすむ。頭がぼうっとする。頭が重くなる。頭が痛い。肩が凝る。手がしびれる。などの症状を訴える。これらの症状とアニメによる意識障害を併せてアニメ・ファミコン症候群と名付けてみた。まずコンピューターゲームの健康への影響としては視覚機能への影響、筋骨格系への影響、精神神経系への影響にわけられる。これらへの障害防止のためには
1.ゲームを連続して行わない。30~60分以内に限る。
2.部屋の明るさは暗すぎず、明るすぎず、光反射の少ない環境で、画面との距離は約50cm離す。
3.画面に対するこどもの姿勢に十分注意し、寝ころんでやったり、手を空間に浮かして遊ぶようなことはよくない。
テレビゲームとてんかんについては1981年にスペースインベーダーてんかんとして初めて報告され、その後も時々マスコミを賑わしている。今回のポケットモンスターのアニメ画面にしても、反射てんかんの一つと考えられ、光およびそれらが多数重なる図形や、精神的な緊
張、驚きなどの感情の変化、眼球運動、手の運動、意志の決定や高次の精神活動など、多くの誘発因子が関与している。現在の生活からこれらの機器をなくすることは不可能である。従っテレビやファミコンから離れてこどもと一緒に遊べる家庭環境の構築が望まれる。