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子どもの事故には年齢と起こりやすい事故に密接な関係があります。発達段階によって起こりやすい事故が決まっているのです。
とくに乳児期後半になると、なんでもつまんで口に入れるようになりますから、異物の誤飲事故が多く、窒息や中毒が多くなります。
誤飲したものが気道に入った場合には気道異物となり窒息を起こし、消化管に入った場合には消化管異物となります。消化管異物でも食道にひっかかった時には気管を圧迫しますから窒息を起こすことがあります。気道異物や食道異物は緊急に取り出す必要があります。
消化管異物の場合には飲み込んだものによって処置が異なります。固形物でも鋭利な物や長い物、ボタン型乾電池などは早急に取り出す必要があります。これらは機械的に消化管粘膜を傷つけ穿孔(せんこう)する場合があるからです。乾電池は通電することで粘膜を損傷しますから、潰瘍を作り穿孔することがあります。
胃の中まで落ち込んでも症状がない固形物はそのまま排出されますから経過観察するだけで、ほとんど処置の必要はありません。
しかし消化管内で吸収されて症状が出現する可能性のあるものは注意が必要です。子どもの誤飲事故の中でもっとも多いのはタバコで、次いで医薬品、化粧品、洗剤、殺虫剤などとなっています。これらの品は飲み込んだ後、吸収されて中毒症状を起こします。
中毒症状が出現する可能性のあるものは早々に嘔吐(おうと)させる、胃洗浄するなどの処置で体内から排除する必要があります。
子どもが異物として誤飲するものは多くが生活用品で、畳や床の上など、ほとんどが50cm以下の高さに置かれています。誤飲事故は乳児が「はいはい」から「伝い歩き」を始めたころに多く発生します。
誤飲事故の多くは保護者が家事、テレビ、電話、昼寝などで、ちょっと目を離したすきに起こりますから、日用品を手の届く場所に置かないようにすることなど、子どもの発達段階に応じた注意で事故は防げるものです。
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子どもの事故による傷害が問題になっています。1歳以上の子どもの死亡原因を見ると、すべての年齢で第1位は不慮の事故となっています。子どもの場合には病気で傷害を受けるよりも事故で傷害を受ける機会のほうが多いのです。今月は子どもの事故について考えてみました。
事故というのは予測できないことで防ぎようがないことを言いますが、多くの子どもの事故は年齢によって起こりやすい事故が決まっていますから、注意さえすれば防ぐことができるものがたくさんあります。
しかし現在、日本では死亡などの重篤な事故はニュースで知ることができますが、各医療機関で経験するような小さな事故については、実態を報告して事故の原因や起こり方を詳細に検討して予防法を確立しようとするシステムはありません。
したがって同じような事故が同じような頻度で起こり続けます。各個人が経験した事故の教訓が生かされないために、その後の事故予防につながらないのです。
また事故を見た人でも、まさか自分の子どもにはこんなことは起こらないだろうとか、事故はその子どもや親の責任であると片付けてしまう人にとっては、事故の経験も事故予防のための環境整備の動機にはならないと思われます。
子どもは大人には思いもかけない行動に出るものですが、子どもの事故が起こりやすい年齢と場面は決まっているのです。ここに事故を予防する手立てを講ずる余地があります。
事故予防のために、単に「注意が必要である」とか「子どもから目を離さないようにしましょう」と言った警告文を掲げるだけでは事故がなくなることはありません。どのような場面が危険なのかをはっきり示し、思いがけない子どもの行動でも事故が起こらないような環境整備を行い、予防処置をきちんと示すことが大切なのです。
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今月は感染性胃腸炎、とくにカンピロバクターやサルモネラ菌による胃腸炎・腸炎についてお話してきました。細菌感染による胃腸炎は全身症状をともなうことが多く注意が必要です。今回はそのなかでもO-157で有名な病原性大腸菌についてお話します。
病原性大腸菌の中には腸管出血性大腸菌を代表とするいくつかの菌型があります。その中でベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌はもっとも激しい症状を示します。
ベロ毒素は出血傾向や腎臓障害を起こして急性腸炎とともに全身症状、とくに腎不全や神経症状をひき起こすもので、赤痢菌が産生する毒素と同じものです。ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌の血清型による分類でO-157はそのうちのひとつです。
病原性大腸菌は一部のウシの腸管に存在します。処理過程で内臓や食肉部分に菌がつくことがありますから、生レバーや生肉をそのまま食べると感染することがあります。
病原性大腸菌を経口的に摂取すると20~70%が発病します。感染しても症状がまったく出ない場合から、軽い下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、著しい血便とともに重症の合併症で死亡する、までさまざまです。
潜伏期間は3~5日間です。激しい腹痛をともなう水様便から血便になります。発熱は軽度で、1~2日で血便になりますが、次第に血便の程度がひどくなって真っ赤な水様便が肛門からふきだす状態になります。
溶血性尿毒症症候群または脳症などの重症合併症は下痢が見られて、数日から2週間以内に、6~7%の人に発病し、死に至る場合は1~5%と言われます。
激しい腹痛や血便、高熱、意識状態の変化、尿量の減少、血尿、蛋白尿、血小板数の減少などは重症化の兆候です。
また5歳以下の小児や高齢者は、高熱の持続や早期の腎不全、脳の出血や梗塞など重症化しやすいと言われます。牛生肉や生レバーなどの摂取には慎重でなければなりません。
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サルモネラ感染症は2つに分けられます。ひとつは腸チフス・パラチフスを起こすチフス性疾患です。もうひとつはこれ以外の非チフス性サルモネラ症です。
チフス性疾患はチフス菌・パラチフス菌が原因の腸チフス・パラチフスです。この細菌は人だけが感染源になりますから、衛生状態が良くなると発生数は減少します。
これに対して、非チフス性サルモネラ症はチフス菌・パラチフス菌以外のサルモネラ菌による感染症です。この細菌はさまざまな動物が保菌していて、食物や動物を介して感染しますから、衛生状態がよくなってもサルモネラ感染症は時々発生します。
今回は非チフス性サルモネラ感染症についてお話します。
サルモネラ菌は動物に疾患をひき起こすもので、これが人にも感染症を起こすのです。とくにサルモネラ菌はニワトリやタマゴについていることがあります。したがってタマゴについたサルモネラ菌が原因の食中毒が発生することになります。 タマゴかけごはんやすき焼きの生タマゴ、加熱が不十分なタマゴ料理を室温に放置しておいた場合などに食中毒が発生することがあります。
またサルモネラ菌は、はちゅう類や両生類などのペットから感染することがあります。とくにミドリガメとの接触で感染する危険性が知られています。
サルモネラ感染症の潜伏期間は6~72時間で、その症状は発熱、腹痛、下痢、粘血便などです。この症状だけで他の細菌性胃腸炎と区別することはできません。しかし一般に発熱は高熱であり、その頻度も高く、持続時間も長いなど重症であることが特徴です。
さらにサルモネラ感染症は胃腸炎症状だけでなく、髄膜炎、心内膜炎、骨髄炎、関節炎などを起こすことが知られています。
サルモネラ菌は他の細菌性胃腸炎に比べて排菌期間が長く、保菌者になることもあります。保菌者は何カ月も菌を排出することがありますから保菌者からの感染も重要です。
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嘔吐(おうと)や下痢を示す感染性胃腸炎はよくみられる病気ですが、その原因の多くはウイルスです。原因ウイルスとしてロタウイルスやノロウイルスが有名です。
昔に比べると細菌性胃腸炎の頻度は減少していますが、その重要性が少なくなったわけではありません。最近では感染経路や全身症状など、むしろ重要な意味を持つものが増加していると考えられます。
今月は細菌性胃腸炎の原因で多いカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌についてお話したいと思います。
細菌性胃腸炎の原因菌の中でもっとも多いものはカンピロバクターによるものです。カンピロバクターによる胃腸炎の主な症状は下痢ですが、なかでも血便の頻度が高いことが特徴です。またこの菌は腸炎以外にも髄膜炎や敗血症などの全身感染症を起こすことがあります。
カンピロバクターはもともと人と動物の共通の感染症で、家畜動物や鳥の腸管内に存在する細菌です。ブタ、ウシ、ヒツジ、ニワトリ、ペット、野生動物、野鳥などの腸管に存在します。
人はこれに汚染された水、生乳、食肉などを摂取して経口感染します。ペットに直接、接触してうつることもあります。原因食品のなかでは鶏肉が重要です。ニワトリの保菌率は50~80%であると言われます。市販の鶏肉でも内臓や皮膚はカンピロバクターに汚染されていることがありますから、生食には注意が必要です。
またこれらの動物の排泄物で汚染された水を介して食中毒が発生することがあります。キャンプ場の井戸水や簡易水道が汚染されていることがあると集団食中毒になることがあります。
カンピロバクター腸炎の潜伏期間は1~7日と比較的長く、下痢、発熱、腹痛、悪心、嘔吐などの症状を示します。下痢はほぼ全例に認められ、約40%は血便を示します。
とくに乳幼児や体力、免疫力の低下した人は全身感染を起こすことがありますから注意が必要です。