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長引く咳の原因の中にまれに気道異物があります。気道異物は乳幼児が何か口に入れているときに誤って気管や気管支に吸い込むことで起こります。したがって気道異物の内容でもっとも多いのは食物で、中でもピーナッツのような豆類がもっとも危険です。
口に物を入れたまま泣いたり叫んだりすると、時に食物は食道に入らずに気管に飛び込むことがあります。気管内に食物など異物が入ると、むせて激しく咳き込みます。多くの気道にある異物はこのとき咳とともに排出されますが、うまく排出されないと気道内に異物となって残ります。これが気道異物です。
気道異物が大きくて喉頭や気管につまって空気の通り道を完全にふさぐと窒息しますから、速やかに処置をしなければ生命に関わります。
小さな異物は気管内に残るか、下部気管支に移動し、だんだん細い気管支へ入り込みます。異物が気道をふさぐと、その部分から先の肺では換気できなくなります。この部分を注意深く聴診すると呼吸音が弱かったり、狭い部分を空気が通るときにわずかな異常音が聞こえたりすることがあります。
気道に異物が入ったときには、急激に激しく咳き込みますが、30分くらいすると咳が弱くなることがあります。物を口に入れていたときに激しく咳き込んだというエピソードが気道異物を疑うポイントになります。気道異物の可能性を考えていなければ早期の診断は困難です。
気道異物がそのまま放置されると、肺炎などの異物による二次的な病変が起こります。このような肺炎は異物を発見し、取り除かなければ治りません。
気道異物は1歳前後の乳幼児、とくに男の子に多いとされます。食事中に驚かしたり泣かしたりすることは危険です。食物の中でもピーナツなどの豆類を小さな子どもに与えることは大変危険です。
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咳は子どもの風邪によく見られるありふれた症状ですが、長く続く咳を見た場合には咳の原因を正しく見極めることが大切です。
子どもはよく風邪をひきますから、くり返す風邪によって咳が長く続いている場合があります。保育園や幼稚園などの集団生活が始まると、多くの子どもが風邪をくり返してひきます。治りかけてはひきなおすことで咳が長く続くように見えます。このような場合にはしばらく集団生活を控えることも大切です。
感染症の中には長い間、咳が持続するものがあります。百日咳やマイコプラズマ肺炎、クラミジア感染症などは一度かかると数週間にわたって咳が持続します。
これらの感染症は単独で発生するものよりも集団内や家族内での感染が多く見られます。とくに最近は成人の百日咳が増えていますから周囲の成人に咳が続く人がいる場合には百日咳の可能性も考えておく必要があります。百日咳では乳児期早期の予防接種歴(三種混合)の確認も大切です。
咳が長く続く場合に多いものにアレルギーによる咳の持続があります。アレルギー疾患で咳が続くものの代表は気管支喘息です。喘息による咳の診断にはアトピー性皮膚炎などのアレルギー体質があることや、家族内に喘息を始めアトピーや鼻炎などの人がいること、咳は昼間よりも夜間、とくに夜明け前や早朝に多いこと、季節の変わり目に多い、呼吸時にゼーゼーとかヒューヒューという音が聞こえることがあるなどのことが参考になります。
気管支喘息による咳には気管支拡張剤が有効ですから、薬剤に対する反応によって喘息を疑うこともできます。
咳の原因に重い病気が隠れていることを疑わせる症状として持続する発熱、活動性の低下、成長障害や体重増加不良、呼吸困難、低酸素状態の持続などをともなう場合が挙げられます。このような症状があれば出来るだけ早期に精密検査を受ける必要があります。
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咳は子どもが小児科を受診する原因の中で発熱とともに多いものです。咳の原因で多いのは風邪によるものですが、中には重要な疾患が隠れている場合がありますから油断できません。
今月は子どもによく見られる症状でありながら多くの疾患を含む可能性のある咳についてお話したいと思います。
咳は元々、気道内の分泌物や異物を排除する生体の防御反応のひとつですから、咳を治療していくときには風邪の咳と決めつけてただ単に咳止め薬を与えるだけでなく、その原因を考えて治療することが大切です。
咳は気道にある咳受容体が刺激を受けることによって発生します。この受容体は気道の粘膜下にあり気道内の異物、感染症の結果生じた分泌物や化学物質などの刺激を受けて、これが自律神経を介して延髄にある咳中枢を刺激します。
咳中枢から出る刺激が脊髄神経を介して横隔膜や肋間筋を急激に収縮させることによって咳が発生します。 咳受容体を刺激するものには炎症による刺激、機械的な刺激、化学的な刺激や温度変化による刺激などがあります。
上気道にある咳の受容体はウィルス感染にともなう分泌物や気道に入った異物など、物理的な刺激に反応しやすく、下気道にある受容体はタバコの煙や刺激のあるガスなど、化学的な刺激に反応しやすいと言われます。
咳の原因としてもっとも多いものはウィルス感染に伴う咽喉(のど)の炎症です。つまり風邪による咳がもっとも多いのですが、この咳は普通、短期間で自然に治まります。したがって咳を止める薬剤を使用する必要があるかどうかを十分に見極めることが大切です。
咳は喀痰を排出する役割がありますから、咳による食欲低下や睡眠障害がある場合には咳止めの薬剤を使用しますが、喀痰が多い場合には咳止めのみの薬剤を漫然と使用することには注意を払う必要があります。
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幼児期とは普通1~5歳の子どもを指します。この時期は乳児期に次いで身体の発育がめざましい時期で、成長や発達にともなって大量の栄養を必要とします。
また幼児期は食事が単なる栄養補給の手段としてだけでなく、食事を通して家族との関係や生活習慣を確立する大切な時期です。
幼児期には歩行の開始などで運動量が著しく増加しますから、エネルギー必要量は体格に比べて多くなります。またエネルギーだけでなくたん白質や鉄、カルシウム、ビタミン類などの必要量も幼児期には増加しますから注意が必要です。
私たちの食事は朝、昼、夕の3回です。幼児期には間食を1~2回与えます。食事を一定の時間に与えることで生活のパターンが決定されます。生活リズムを決めるもっとも重要な因子は睡眠ですが、食事は日常生活のリズム決定に大切な役割を果たしています。
食事の時間を決めるのは大人の生活パターンです。大人が夜型の生活をすれば子どもの生活も夜型になります。夜型生活の大人は夜食を食べることがあります。子どもにも夜食を与えるようになると、子どもが夜更かしになり、朝起きられなくなる、朝食を食べなくなるなど食生活の乱れが出てきます。
生活習慣病のように食生活の片寄りが病気の発生に大きく関与している場合があります。この中には片寄った食生活が子どもの時代に習慣づけられていることがあります。さらに大人の片寄った食生活は子どもの食事に大きな影響を及ぼします。
以上のように子どもの食事を、家族全員の食生活としてとらえていくことが大切です。
家族全員で毎日決まった時間に起きて、しっかり朝食を食べることから始まり、昼食、夕食の時間が一定になることで生活リズムが確立します。
このような睡眠と食事の習慣を幼児期からしっかりつける必要があります。
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今月は子どもの食事についてお話しています。
新生児期から乳児期前半は母乳やミルクだけですべての栄養をまかなっていますが、乳児期後半の離乳食を経て、幼児期には普通の食事をとるようになります。
このような食事の変化は、からだの成長にともなう「食べる」という生理的な機能の発達によるものです。
新生児の口は母乳を飲むのに適した形をしています。歯が生えていないことや口の中が狭いことは、のどの奥に乳首を吸いこんで母乳を飲むのに適しています。
さらに新生児期には哺乳(ほにゅう)に関する原始反射と呼ばれる反射があります。片方の頬をこすると、刺激された方向に顔を向け、唇を突き出して乳首を捜すような動きが見られます。
口の中に乳首が入ると、自動的に乳を吸うような運動が起こります。このような自動的に母乳を吸うのに適した動きが原始反射です。
生まれて間もない赤ちゃんが母乳を吸うためには原始反射があると、授乳がとてもスムーズに進みます。
しかし離乳食を食べ始めると、口に食物をためて咬むような動きが出てきますから、原始反射があると、食べることのじゃまになります。離乳食を始める生後5~6か月には原始反射は消えてしまうのです。
また離乳食を始める頃には、首が座るなどのからだを支える全身の力や、咬むことや飲み込むことに使うあごの力などが強くなっています。
また毎日決まった時間に離乳食を与えることで、離乳食の時間を中心とした生活リズムが確立します。食事は母子関係や生活習慣を確立する上で重要な役割を果たしています。
一人だけの食事よりも、大勢で一緒にする食事のほうが楽しいものです。子どもに離乳食を食べさせる場合にも家族の食事時間に合わせて行いたいものです。