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麻疹の排除は日本だけの問題ではありません。世界保健機構WHOでは世界的な麻疹排除計画が推進されています。この計画では日本を含む西太平洋地域の麻疹を2012年までに排除することになっています。
現在の日本には麻疹の持続的な感染流行はありませんが、時々集中して発生することがありますから、WHOの基準では、おおよそコントロールされているが排除には至らない状態であるとされています。韓国ではすでに欧米と同じように排除宣言が出されています。
麻疹を排除するためには麻疹ワクチンの2回接種を徹底して、その接種率を95%以上に保つことが必要だとされます。
麻疹ワクチンは2年前から1歳児と就学前に2回接種が開始されています。当時、接種の対象にならなかった現在小学3年生から高校3年生までの子どもたちに、今年の春から2回目の接種を行うことになりました。その対象が中学1年生(3期)と高校3年生(4期)です。これは5年間の経過措置で、2012年までに現在高校3年生以下の子どもたちすべてに麻疹ワクチン2回接種を済ませて麻疹を排除する計画なのです。それぞれの対象者は1年間に接種を済ませなければなりません。
麻疹の排除は小児科医の悲願です。しかし残念なことに中学1年生と高校3年生のワクチン接種率は全国的にとても低いものです。今年4月から3ヶ月間の集計では3期が38.8%、4期は29.6%でした。徳島県の接種率は3期が33.1%、4期は24.6%と全国平均を下回っています。
麻疹の排除計画が一般の人に十分理解されていないことはとても残念です。
これから寒くなると、インフルエンザワクチンの接種や感冒に罹患、受験勉強などがあり、こどもがワクチン接種のために病院受診することが難しくなります。大学入学に際してワクチンの接種証明を求められることもあります。できるだけ早期に接種を済ませたいものです。
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麻疹は大変重篤な症状を示す感染症ですが、麻疹に特別な治療法はありません。麻疹から子どもを守るには、麻疹患者からの厳重な隔離と、予防接種を徹底すること以外に手段はありません。
麻疹ワクチンを実施したときの免疫獲得率は約95%とされます。1回接種ではワクチンの接種率が100%あっても5%程度の免疫の出来ない子どもがある訳です。1歳児(第1期)の接種率は95%くらいですから実際の免疫獲得者は90%くらいと考えられます。
さらにワクチンを受けて免疫を獲得した人でも年が経つと徐々に免疫が低下します。免疫がつかなかった人と一度ついた免疫が低下した人の割合が増加すると麻疹が流行する環境条件が整います。そこへ外から麻疹ウィルスが持ち込まれると、ワクチンを接種していない乳児や、ワクチン接種者でも免疫の低下した人は麻疹にかかるのです。
そこで麻疹に対する免疫をより確実につけるために2006年4月から麻疹ワクチンの2回接種が実施されることになりました。
実際には麻疹と風疹の混合ワクチン(MRワクチン)が2回接種されます。接種方法は1回目を1歳から2歳未満の1年間(第1期)に、2回目は小学校入学前の1年間(第2期)に接種することになっています。
ここで問題になるのはワクチンの接種率です。とくに2回目の接種率は今後の麻疹排除計画を遂行する上で大変重要なポイントになります。接種率95%以上あれば麻疹排除は可能とされます。
昨年、MRワクチン(第2期)の接種率は全国平均で87.9%と、目標の95%を達成できませんでした。徳島県は84.1%と全国第43位と下から5番目でした。
MRワクチン(第2期)は就学前の1年間が接種時期です。接種率を上昇させるためには、就学時健診でのチェックや未接種者に対する個別通知など行政側のワクチン担当者だけでなく、学校関係者などの協力も欠かすことができません。
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麻疹は従来子どもの病気と考えられていました。しかし最近、麻疹の多くが高校生や大学生に発生しています。なぜ麻疹が高校生や大学生に発生しているのでしょうか。今月は麻疹の問題点について考えてみました。
麻疹は麻疹ウィルスに接触してから10~12日後に38~39度の発熱と、鼻水、激しい乾いた咳、結膜炎などのカタル症状と呼ばれる症状で発病します(カタル期)。発病後3日くらいで一時熱が下がりかけますが、その頃に頬っぺた内側の粘膜にコプリック斑と呼ばれる白い斑点が出現します。その後再び高熱となり全身に発疹が出現します(発疹期)。嘔吐や下痢などの消化器症状をともなうこともあります。発熱は高熱で発疹出現後3~4日で下がります。発疹は紅斑で耳や首の後ろから出現し、全身に広がります。発疹は褐色の色素沈着を残して解熱後もしばらく残ります(回復期)。
麻疹には肺炎や脳炎、中耳炎などの合併症が多く見られます。これは麻疹にかかると全身の抵抗力が低下するためです。したがって元々体力や抵抗力の弱い乳幼児が麻疹にかかると脱水症や肺炎などの合併症で輸液や入院治療が必要となることがあります。
また基礎疾患のある子どもにとっては致命的な症状をひき起こすこともあります。
麻疹は誰でもかかる可能性のある病気ですが、誰もが無事に治るとは限らないのです。
麻疹の伝染力は感染症の中でもっとも強いもので、空気感染します。麻疹に抵抗力のない人は接触すれば100%感染し、感染すれば必ず発病します。他のウィルス感染症のように不顕性感染はありません。
麻疹の伝染力がもっとも強いのはカタル期ですが、発病1日前から解熱後3日間くらいは伝染力があります。もし麻疹患者が発生すれば十分な期間、患者を隔離して麻疹の蔓延を防ぐ必要があります。
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私たちは注意を集中することによって特定の刺激を認識することができます。私たちを取り巻く環境からは多くの刺激が発生しています。この多くの刺激の中で自分に役立つ刺激や危険を知らせる刺激、大きな刺激、変化する刺激に対しては自動的に注意が向けられます。
しかし特徴のない刺激に対して、注意は向きにくく、そのような刺激に注意を集中し続けるには相当強い意識的な努力が必要となります。興味のない授業に注意を集中し続けるのは誰にとっても困難なものです。
不注意とは注意を集中する機能が低下した状態です。不注意には、刺激に反応しない、ぼんやりしている、人の話を聞いていない、よく忘れ物をする、課題や作業にケアレスミスが多い、気が散りやすいなどがあります。
注意欠陥多動性障害の子どもは自分の興味があるものに対しては過度に注意を集中させますが、社会生活上で必要な注意を働かせたり、注意を持続させたりすることには困難をともないます。
環境刺激の少ない所で1対1の場面では注意が集中できますが、刺激の多い環境や集団の場面では注意集中が困難になります。
注意欠陥多動性障害の原因には、脳の機能異常や脳損傷などが考えられていますが、いまだに明らかな原因は不明です。遺伝的には親子で同じような症状を示す場合がありますから、原因に遺伝的な要因が関与している可能性はあります。
不注意や多動、衝動性といった症状を見て、親の育て方が悪いとか教育が悪いと言って両親を非難する人がありますが、育て方や教育が悪くて本症になる訳ではありません。脳の機能障害のために起こった症状ですから、抑制が効かず、指示が入りにくい状態になっているのです。正しい診断、医学的な治療、教育的な配慮が求められます。
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注意欠陥多動性障害の頻度は3~7%とされます。多くは学童期に診断され、成長するにしたがって頻度は減少します。しかし学童期に注意欠陥多動性障害と診断された人でも、思春期には70%、成人期にも30~50%が症状を持ち続けて、日常生活に何らかの支障があると推定されています。
多動を主症状とする注意欠陥多動性障害には多動と衝動性を特徴とする多動性・衝動性優勢型と不注意を特徴とする不注意優勢型、およびその混合型があります。もっとも多いのは混合型で50~60%を占めます。不注意優勢型は25~30%、多動性・衝動性優勢型は15~20%であるとされます。
男女比は8:1と圧倒的に男子に多いとされます。これは幼児期後半から学童期には多動性や衝動性を示す男子が目立ち、診断されやすいためと考えられています。不注意優勢型の女子は診断されずに放置されている場合があります。女性は成人してから、片付けられないとか捨てられないなどの症状が問題になって、本症と診断されることがあります。したがって実際の男女比は2.5~5:1くらいと言われます。
本症の症状は年齢によって変わります。
学童期では学校生活の中で問題になる症状は、着席できない、列を離れる、おしゃべりする、手を挙げないで答えてしまう、ルールに従わない、友達にちょっかいを出す、短気である、仲間に入れてもらえない、言いつけを守らない、宿題を終わりまでやらない、日課を忘れる、身の回りのことをしないことなどが上げられます。
思春期になると、学校生活で忘れ物、課題を最後までしない、積み重ねの必要な学習をしないなどに加えて、不安や抑うつ、非行などの問題行動が出てくることがあります。
さらに成人期には、仕事を頻繁に変える、長く単調な仕事に注意を集中し続けるができない、金銭・旅行・仕事その他の企画に衝動的な判断をする、自動車事故が多いことなどが出てきます。