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今月は母乳育児の必要性についてお話しています。出産すればだれでも母乳育児がじょうずにできるわけではありません。そこで母子をとりまく人たちや社会が母乳育児を支援することが大切になります。
母乳が産生されるためにはプロラクチンという乳汁分泌ホルモンが必要です。このホルモンは脳下垂体前葉から分泌されます。また乳房を成長させて乳腺細胞を増殖させるには妊娠中に増加するプロゲステロンやヒト胎盤ラクトゲン(HPL)というホルモンが作用します。しかしプロゲステロンやHPLはプロラクチンの作用を抑えていますから分娩(ぶんべん)前に母乳分泌が増加することはありません。分娩にともなってこれらのホルモンが減少するとプロラクチンの作用があらわれます。
プロラクチン濃度は分娩直前がもっとも高く、その後の濃度は乳首への刺激がなければ急速に低下します。そしてプロラクチンの濃度は授乳するたびに高くなりますが、45分くらいすると低下します。短い間隔で繰り返して乳首を刺激されることでプロラクチンは高い濃度を持続できるのです。
しばらくすると母乳の分泌は赤ちゃんが吸い取った分だけ分泌されるようになります。飲み残しがあると母乳分泌は減少します。よく飲む赤ちゃんのお母さんの母乳はたっぷり出ることになります。
授乳の基本は飲みたいときに飲みたいだけ与えて、回数や時間を制限しないことが大切です。このことは赤ちゃんの要求に応じた授乳と言われます。赤ちゃんが母乳を欲しがっているサインに合わせて授乳することが大切なのです。
赤ちゃんが母乳を欲しがっているサインには母乳を吸うように口を動かす、母乳を吸うときのような音をたてる、手を口に持ってくる、クーとかハーとかいうような柔らかい声を出すなどいくつかあります。
授乳の時間や回数を制限せず、赤ちゃんが母乳を欲しがるサインを見極めて、いつでも授乳できるようにお母さんは赤ちゃんのそばに居ることが大切です。
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赤ちゃんが生まれるまでは、ほとんどの人が母乳で育てたいと思っています。ところが実際に授乳を始めてみるとなかなか思うようにすすみません。今月は母乳育児の大切さとその支援についてお話します。
母乳による育児は本能ではありません。母乳育児は他の母親が授乳する姿を見て学習して習得するものなのです。したがって現代のように周囲の女性が授乳する姿を見る機会がほとんどない社会で育った子どもが母親になってすぐ上手に授乳できるとは限りません。このような社会では出産した女性に母乳育児の具体的な方法を教えて母乳育児を支援することが必要になります。
母親が赤ちゃんに母乳をうまく飲ますことができるようになると、育児そのものに自信がつき育児における満足感や幸福感が得られるようになります。母乳育児ができるようになると、その他の育児の基本的な技術も身につき、赤ちゃんの出すサインを自然に読み取る能力を獲得することができます。その結果、育児不安が軽減されることになるわけです。
母乳育児の利点については、これまでの研究で死亡率や病気にかかる率が低くなることが明らかにされています。もし母乳をやめて人工乳にした場合にアレルギーや湿疹(しっしん)が2~7倍、中耳炎が3倍、胃腸炎が3倍、髄膜炎が3.8倍、尿路感染症が2.6~5.5倍、?型糖尿病が2.4倍、乳幼児突然死症候群が2倍、肺炎・下気道感染症が1.7~5倍、炎症性腸疾患が1.5~1.9倍、ホジキン病が1~6.7倍になると言われます。
母乳育児をすすめるのは、母乳が赤ちゃんにとってもっとも適した食べ物であるばかりでなく、保健・栄養・免疫・発達・心理・社会・経済・環境などさまざまな面から大きな利益をもたらすからです。
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今回は予防接種の広域化についてお話をしたいと思います。広域化とは市町村の枠を超えて自分の受けたい地域の医療機関や医師によって予防接種を受けることができる制度のことを言います。
現在、定期予防接種は市町村が実施主体ですから、居住地内の医療機関で受けています。しかし予防接種は個別接種で受けることが原則ですから、できるだけ普段から診てもらっているかかりつけ医での接種が望まれます。かかりつけ医は本人の病歴や体質、その時の体調をもっともよく知る者ですから予防接種を受ける場合にはもっとも適切な医者であると考えられます。
しかし居住地にかかりつけ医がいない場合など、やむを得ずに他の市町村の医療機関で診察治療を受けている人も居ます。このようなときに現在の制度では簡単に他の市町村で予防接種を受けることはできません。
そこで平成19年4月からは徳島県内の市町村ではどこでも予防接種を受けることができる制度を実施することになりました。徳島県、各市町村、徳島県医師会、日本小児科医会徳島県支部が協力してこの制度を実施するわけです。
定期接種の中でポリオを除くBCG、三種混合、二種混合、麻疹(ましん)、風疹(ふうしん)、麻疹風疹混合、日本脳炎の各ワクチンがこの制度の適用を受けます。 この制度を利用できる医療機関は県医師会がまとめています。現在、県内の市町村はそれぞれ独自に接種料金を設定していますから、医療機関側の事務手続きは大変煩雑なものになります。4月に制度実施に踏み切りますが今後の利用状況によっては市町村間での制度の簡素化などについて話し合いをする必要があります。
この制度は現在の各市町村で行っている予防接種をすべて他の市町村で行おうとするものではありません。現在の制度の下でどうしても受けることができなかった人や、どうしても他の地区の医療機関で接種したい人に接種の機会を提供するためのものです。初年度の実施状況を見て、今後さらに利用しやすい制度に改善していく予定です。
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今月は予防接種についてお話しています。予防接種には定期接種と任意接種があります。定期接種は国が定めて市町村が実施するもので、これ以外のワクチンを任意接種と言います。
定期接種にはポリオ、BCG、三種混合(百日ぜき・ジフテリア・破傷風)、二種混合(ジフテリア・破傷風)、麻疹(ましん)、風疹(ふうしん)、麻疹風疹混合、日本脳炎と老人のインフルエンザがあります。
定期接種のやり方は予防接種法に定められています。接種の実際は実施する市町村によって多少異なることはありますが、法律に定められたやり方と違うやり方をすると任意接種になりますから注意が必要です。
定期接種の費用は原則的には市町村の負担です。重篤な健康被害が生じた場合の責任は市町村長が負います。予防接種の健康被害に対する補償は予防接種健康被害救済制度によって行われます。その予防接種と健康被害の間に因果関係があるかどうかは国が認定します。因果関係が認定されれば、市町村長は健康被害に対する補償を行います。
給付内容は医療費のほか入院通院に必要な費用や障害年金、介護費用、死亡一時金まで含まれています。
予防接種と健康被害の因果関係を医学的に証明することはなかなか難しいものですが、最近は健康被害を受けた人の救済を第一に考えて補償される場合が多いようです。
しかし任意接種で重篤な健康被害が発生した場合にはこの救済制度の適応を受けることができません。市町村が行う定期接種であっても接種期限を過ぎている場合などは注意が要ります。
たとえば三種混合ワクチン1期初回3回の場合ですが、それぞれの接種間隔は3週間から8週間と定められています。この接種間隔が8週間以上あいた場合、医学的には必要回数接種したほうが良いのですが、法律上は任意接種になってしまいます。
子どもたちの予防接種はできるだけ余裕をもって受けたいものです。生後3カ月時BCGを接種するときに、その後の定期予防接種の接種スケジュールを小児科医と相談して下さい。
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予防接種は子どもの病気予防に大切なものです。予防接種が普及してその病気が少なくなると、多くの病気から子どもを守ってくれている予防接種のありがたさを忘れてしまうことがあります。今月は子どもにとって大切な予防接種の話をします。
昨年、予防接種法の大幅な改正があり予防接種を実際に行っている医療機関でも多少混乱が見られました。その中でもっとも大きな変更点は麻疹(ましん)風疹(ふうしん)混合(MR)ワクチンです。
以前は麻疹および風疹は単独のワクチンを用いて1歳から7歳半の間に行われていました。今回の変更はMRワクチンを用いて1期を1歳に、2期を小学校入学前の1年間に、合計2回行うことになったことです。
平成19年4月、小学校に入学する子どものMRワクチン2期の接種期限は3月31日です。徳島市におけるMRワクチン2期の接種率は1月末の時点で約55%です。小学校入学前にMRワクチン2期の接種を済ませていない子どもが半数近くいることになります。これは大変残念なことです。
麻疹や風疹はかかってしまえば治療法のない病気です。とくに麻疹は症状も重く多くの合併症があり、麻疹で亡くなることもあります。また伝染力も強いので周囲の人に対する影響も大きい病気です。
世の中から麻疹を根絶することが全世界の小児科医の悲願です。すでに欧米などの先進地域では麻疹ワクチンを2回接種することで、麻疹を封じ込めることに成功しています。
日本で行われている予防接種を見れば、日本は予防接種に関してはまだ後進国です。日本でも昨年からやっとMRワクチンの2回接種が可能になったのです。実際に予防接種を受ける人が、MRワクチン2回接種の意義を十分理解することが大切です。
1回接種では免疫が充分ついていないことがあります。また一度ついた免疫は時間とともに低下します。これらのことを補う意味で2回接種が大切なのです。
小学校入学の準備はまずMRワクチンからです。MRワクチン2期を済ませて小学校入学です。