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インフルエンザは冬のかぜの代表です。しかし最近では地域によって夏でもインフルエンザの流行が見られることがあります。これは迅速検査が普及したためにインフルエンザの流行をいち早くとらえることができるようになったためです。インフルエンザが冬のかぜであるというこれまでの常識は通用しない場合があります。
ここ数年でインフルエンザに対する考え方で大きく変わったことが2つあります。迅速検査が普及したことと、抗ウイルス剤が使用できるようになったことです。
治療薬がなかったときにはインフルエンザに対する治療もそれ以外のかぜに対する治療も変わりませんでした。以前の治療は発熱や頭痛、せきなどの症状を抑えることと合併症の予防が主体でした。症状を取って楽にする治療を対症療法と言います。また細菌感染の予防として抗生剤が多く使われてきました。
これに対して抗ウイルス剤による治療は原因療法です。現在使用できる抗ウイルス剤は鼻やのどの粘膜からウイルスが飛び出すのを阻止する薬です。したがってウイルスがのどや鼻からたくさん飛び出してしまった後では薬の効果が十分発揮されることはありません。発病初期に診断をつけて、できるだけ早く治療薬を開始することが治療効果を高めることになります。発病後48時間以内に治療を始める必要があると言われます。診断の遅れは治療の遅れとなって、それだけ治りも悪くなります。
しかし迅速検査は鼻粘膜や鼻水の中からウイルスを含む試料を採取することが必要です。したがって試料の中にどのくらいウイルスが存在しているかが、検査結果に影響します。ウイルス量が多ければ検査結果は明らかな陽性を示しますが、ウイルス量が少なければインフルエンザであっても陰性に判定されることがあります。ウイルス量が多くなるには発病後数時間かかると言われます。あまり早い時期に検査をすると判定を誤ることがありますから慎重な判断が求められます。
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寒くなるとインフルエンザの流行が気になる季節です。予防接種も始まります。今月は最近よく利用されているインフルエンザの迅速検査についてお話したいと思います。
インフルエンザにはA、B、Cの3型ありますが一般によく知られているのはA型とB型です。最近は毎年A型もB型もともに流行しています。これは迅速検査の普及のおかげで型別の流行状況がよくわかるようになりました。
インフルエンザは突然発症する高熱をともなうかぜですが、せきや鼻水などのかぜ症状に加えて筋肉痛や倦怠感などの全身症状が強いことが特徴です。下痢や嘔吐などの消化器症状も多く、気管支炎や肺炎など呼吸器系の合併症も多く見られます。子どもでは高熱によるけいれんや脳炎・脳症などの神経系の合併症が見られることもあります。
普通のかぜよりも重い症状を示すことの多いインフルエンザを、他のかぜと区別することは大切なことですが、インフルエンザを特定するこれまでの検査は費用と時間がかかるものでした。
従来のインフルエンザの確定診断にはウイルスの分離や血液中のウイルス抗体価の測定が行われていました。しかしウイルス分離は特殊な施設でしか行うことができませんし、結果が出るまでに長い時間がかかります。血液中の抗体検査は、急性期と回復期に2回検査をして、その値を比較し抗体価の上昇で判定します。
したがってこれらの検査は一般の外来診療で、急ぐときに役立つものではありません。検査結果が出たときには治った後です。ただし重症な場合や合併症・後遺症が見られるときなどにはこれらの検査をしておくことが必要です。
これに対して、最近普及してきた迅速検査は結果が15分くらいで判明します。検査の手技もとても簡単ですからインフルエンザの治療や病状の経過観察には欠かせない検査になっています。
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乳児健診にはポイントになる月齢があります。前回お話した4カ月健診もそのひとつですが、10カ月も大切な時期のひとつです。
この時期は運動面でも精神面でも著しく活発になりだんだん人間らしい特徴が出てきます。
運動面ではハイハイをする、つかまり立ちやつたい歩きを始めるなど、からだのバランスをとって移動することができるようになります。またからだの移動などの粗大な運動とともに、指を使った細かい運動が上手になり、小さいものを指でつまむことができるようになります。
言語や理解に関しても、「だっだっだっ」「まんまんま」など意味のないことば喃語(なんご)を盛んにしゃべるようになります。大人の言うことを理解し、「ダメッ」と言うと、じっと人の顔を見て手をひっこめるようになります。家族と他人の区別がつくようになり、子どもによっては人見知りや夜泣きも始まります。
さらにこの時期は何にでも興味を示して、からだから乗り出しますから、のぞき込んで転落したり、立位や歩行の時にもバランスを崩してよく転倒することがあります。また何でも拾って口に入れますから、家庭内での誤嚥(ごえん)や誤飲が多くなります。このように事故の危険性が増す時期ですから注意を促す必要があります。
栄養面でも後期離乳食が3回食になり、何でも食べられるようになりますが、遊び食いやむら食い、好き嫌いなど食に関する問題も出てきます。栄養状態や体格面では個人差が大きくなります。そこで個人の離乳食の進み具合を見て、個別に具体的な指導が必要となります。この時期の食事のしつけは、その後の食事習慣を確立する上でとても大切なものです。
また感染症にかかることが多くなり、発熱などに対する対処法の指導も必要となります。
乳児期は子どもの活動が活発になるとともに母親のストレスは大きくなります。小児科医は乳児健診を通してこのようなストレスの多い母親の育児不安を解消することに努めているのです。
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新生児や1カ月時の健診は出産した産院や病院の新生児の担当医が行うのが普通ですから、一般の小児科医が行う最初の乳児健診は4カ月健診になります。言い換えれば乳児が専門の小児科医に初めて診察を受けるのは4カ月健診と言うことになります。
4カ月健診は乳児健診の中でももっとも重要なもののひとつです。運動発達の中でも首のすわりは普通100日、つまり3~4カ月であるとされます。この首がすわる時期についてはあまり個人差がありません。3カ月で首がすわっていなくても異常ではありませんが、4カ月を過ぎてまだ首がぐらぐらしているようであれば異常として、厳重な経過観察を行うか精密検査をする必要があります。首がすわることはその後のお座りをしたり立位になったりした時に背筋がしっかりすることの元になりますから運動発達の中ではもっとも大切な現象と言えます。
またこの時期にはあやすと大きな声をあげて笑い、人の顔をよく見て喜ぶなど表情が豊かになります。視覚としても人の顔をじっと見つめる注視から、動くものを目で追いかける追視が見られるようになります。さらに人の顔を見てなにか話しかけてくる語りかけが見られるようになります。また抱っこしている時に偶然手に触った着物の裾(すそ)などをつかむようになります。ガラガラを持たせるとじっと見つめたり口に持っていきなめたり振ったりするようになります。
4カ月時には体重や身長を測定することでそれまでの母乳またはミルクなどの栄養法が適切に行われているか、その後の離乳食の準備はできているのかを推測することができます。家族の体質や皮膚の状態を見てアレルギーの有無を考慮して検査の必要性や食事の指導も行います。
乳児の状態からそれぞれの家庭環境を考慮して、それが育児環境として適切であるかどうかを判断します。さらに育児環境から危険なものを排除し、起こりやすい事故を予防することも必要です。また母親の育児不安を取り除いて虐待に至る状況を未然に予防することもあります。このように乳児健診を真剣に行おうと思えばいくら時間があっても不足なのです。
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乳児健診と言うと体重や身長などを測定することだけと考えている人が多いと思います。確かに身体計測で体の大きさ知ることは大事なことですが、身体計測だけが乳児健診ではありません。今月は乳児健診の大切さについてお話したいと思います。
人は生まれた時には体重が約3kg、身長は約49cmです。その後1カ月間に約1kg大きくなって、生後3カ月で約6kgと出生体重の2倍になります。1年後には約9kgで出生時の3倍になります。身長は1年後に約75cmとなり、出生時の1.5倍になります。このようにからだが大きくなることを成長と言います。
身体計測をすることで成長の変化を見ることは大切ですが、大切なのはこれだけではありません。からだが大きくなるにしたがって色々なことができるようになります。生後3~4カ月で首がすわり、その後、寝返りやおすわりができるようになり、ハイハイ、つかまり立ち、伝い歩きを経て1歳くらいでひとり歩きを始めます。また乳児期後半には人見知りをし、1歳くらいで片言をしゃべり始めます。このような運動や知能の変化は神経系の機能的成熟を示すものです。また消化器、呼吸器、循環器などの生理的機能も月齢や年齢とともに変化します。これらの生理的機能が成熟することを発達と言います。
子どもが大人と根本的に異なるのは成長や発達という現象が見られることです。著しい成長が見られるのは新生児期や思春期ですが、それ以外の時にも成長は留まることはありません。成長の速度は月齢や年齢によってよく伸びる時期がほぼ決まっていますが、大きな個人差が見られます。その個人差がどのくらい標準と隔たっていれば異常なのかを判断することが大切なのです。
成長や発達は遺伝的な素質に大きく左右されますが、妊娠中の胎内環境や出生後の育児環境の影響も受けます。栄養や生まれつきの疾患の影響も受けます。これらの状況をあらゆる面から考慮して、子どもたちが健やかに育っているかどうか確認し指導することが乳児健診に求められているのです。