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 流行性耳下腺炎は一般におたふくかぜと呼ばれています。この疾患はウイルス感染症であり、このウイルスに効果のある治療薬はありません。したがっておたふくかぜに対しては痛みをとるとか熱を下げるとかの対症療法だけしかありません。それだけに予防が大切な疾患であると言えます。

 おたふくかぜの主な症状は耳下腺の腫れですが、2歳以下の乳幼児では比較的症状が出にくいとされます。反対に年長児や成人ではさまざまな合併症を起こして症状が重くなることがあります。

 おたふくかぜウイルスは神経に親和性が高く、神経系の合併症が多いとされます。髄膜炎、脳炎、難聴などが問題になります。

 おたふくかぜにかかると髄膜炎の症状がないにもかかわらず、髄液中にウイルスが見出されることがあります。もちろん髄膜炎として高熱、頭痛、嘔吐など激しい症状が見られることもあります。しかし一般におたふくかぜの髄膜炎はほとんど後遺症を残すことなく自然に治ります。水分や栄養を十分補給して安静にしていると、約1週間の経過で治ります。しかし頭痛や嘔吐がひどい場合には腰椎穿刺(ようついせんし)で髄液を排除して脳圧を下げると楽になることがあります。

 難聴はおたふくかぜの2万人に1人くらいの頻度で発生すると言われます。この難聴は感音性難聴と言われる難聴で、治療に反応しにくく完全に聴力を失ってしまうことがあります。多くは片側性ですが、まれに両側性に難聴を来すことがあり大変です。突発性難聴の中にはおたふくかぜが原因のものが隠れている場合があると言われます。

 思春期以降の男性がおたふくかぜにかかると約25%が睾丸炎を合併すると言われます。激しい痛みと腫れが見られます。しかし一般に言われるほど男性不妊の原因になることはないと考えられます。女性では乳腺炎30%や卵巣炎5%の合併もあります。

 重症のおたふくかぜや重い合併症が見られても、原因ウイルスに対する治療法はありませんから予防が大切です。予防はワクチンでおこないます。行

2006年6月20日掲載

 流行性耳下腺炎は一般におたふくかぜと呼ばれるウイルス疾患で、小児科で取り扱う伝染性疾患の代表です。今月はおたふくかぜについて考えてみました。

 おたふくかぜは伝染力が強く集団の中で一度流行し始めると長く流行が続くことがあります。これは潜伏期間が約2~3週間、平均16~18日と長いためです。また発病前の数日間ウイルスが排出されるので患者さんを厳密に隔離することで病気を予防することが難しいことも流行を長引かせる原因になります。

 おたふくかぜの代表的な症状は耳下腺の腫れと痛みです。最初の数日間は口を開けることも食事をとることにも苦労します。腫れは1週間くらい続きますが、ひどい痛みははじめの2~3日です。熱は出る人も出ない人もあり、症状には個人差があります。  

 おたふくかぜウイルスは唾液やのどの分泌液から接触または飛沫で感染します。感染したウイルスはのどから侵入して上気道粘膜と所属リンパ節で増殖して、その後、白血球に感染し、血液で全身に散布されます。次いでウイルスは髄膜、中枢神経、聴神経から迷路、唾液腺やすい臓、精巣、卵巣、甲状腺、乳腺などの全身の腺組織で増殖します。その後再び血液中にウイルスが出現して発病します。ウイルスが侵入してから発病するまでの期間が潜伏期間です。

 唾液腺の腫れは耳下腺にもっとも多く、4分の3の人が両側の耳下腺が腫れます。顎下(がっか)腺や舌下腺が腫れることもあります。発熱しても高熱になることは少なく、20%の人ではまったく発熱が見られません。

 おたふくかぜのウイルスは唾液から出るばかりでなく、血液、尿、大便、髄液、乳汁からも検出されます。ウイルスは症状が出現する数日前から症状出現後7日間くらい排出されます。

 おたふくかぜにかかってもウイルスに直接効果のある薬剤はありません。治療は痛みに対する対症療法しかありません。したがってとくに予防に心がけることが大切なのです。

2006年6月13日掲載

 水痘は伝染性の強いウイルス疾患です。とくに集団生活や家族内で感染しやすいので注意が必要です。水痘は健康な子どもがかかった場合に比較的軽くすんでしまうことが多いために真剣に予防を考える人が少ないのかも知れません。

 しかし新生児や妊婦、成人がかかると思いもかけず重症になることがあります。またアトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患を持つ人や、悪性腫瘍、ネフローゼ症候群などでステロイド療法や免疫抑制剤や抗がん剤による治療を受けて免疫低下状態にある人は重症になることがあります。

 現在、水痘にかかった場合にはアシクロビルという抗ウイルス剤を使って治療を行いますが、やはりかかってからの治療よりは予防に努めるべきです。予防には水痘ワクチンを使用します。

 水痘ワクチンは日本人が開発したワクチンです。このワクチンは大変すぐれたワクチンで、世界保健機関(WHO)に認められ全世界で使用されています。アメリカをはじめ世界中の多くの国が水痘ワクチンを定期予防接種に組み込んでいるのに対して、日本ではまだ任意接種のままです。したがって接種するか否かは接種者またはその保護者に任されていて、その費用も自己負担です。

 水痘は一年中発生する疾患ですが、多くは冬から春にかけて流行します。比較的流行が少なくなる春から夏にかけての時期がワクチン接種の適切な季節であるといえます。

 日本全国での水痘ワクチンの販売数と対象人口数から推測したワクチン接種率は約30%とされます。しかし徳島県の接種率は10%にみたないと言われ、これは全国一低い数字とされています。

 出来るだけ多くの人が水痘ワクチンを受けて不名誉な全国一ワクチン接種率の低い県という汚名を返上したいものです。  水痘ワクチンには重篤な副作用はほとんどありません。1歳を過ぎて麻疹・風疹ワクチンが修了した人は水痘ワクチンを接種することを勧めます。

2006年5月23日掲載

 水痘は水痘帯状疱疹ウイルスによる皮膚感染症です。水痘に一度かかると終生免疫ができますが、一部のウイルスは知覚神経の神経節細胞に潜伏して長い年月を経て帯状疱疹を発病することがあります。帯状疱疹の多くは老人の病気ですが、まれに子どもの帯状疱疹を経験することがあります。

 帯状疱疹は宿主の抵抗力が低下した場合に潜伏していた水痘ウイルスの再活性化が起こり、潜伏していた知覚神経にそって皮膚に水疱が出現します。多くは肋間神経にそって片側性に見られ、激しい神経痛を来す場合があります。

 帯状疱疹では患者さんの上気道からウイルスが排出されませんから空気感染することはありません。しかし皮膚の水疱からはウイルスが出現しますから直接接触することで水痘を発病することがあります。

 水痘は多くの子どもがかかりますが健康な子どもがかかった場合には軽症に終わることがほとんどです。重症の水痘では発疹が出血性になることや発疹の数が多く全身に散布されることが知られています。普通、水痘の発疹は体幹部に出現することが多いものですが、四肢末端まで発疹が出る場合には注意が必要です。

 新生児、妊婦、成人が水痘にかかると重症水痘になりやすいと言われます。また悪性腫瘍や白血病、ネフローゼ症候群などで抗がん剤や副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤を使用している場合水痘が重症化して生命に関わることがあります。また家族内で水痘が発生した場合には反復して大量の水痘ウイルスに暴露されるために重症化することがあります。

 多くの健常な子どものたちの水痘を見ていますと水痘は軽い病気であると考えてしまいます。元気があるからとか仕事の都合で早く学校や保育園に行かせるようなことは絶対に行ってはいけません。十分に治癒していない状態で集団生活に参加することは水痘の流行を広め長引かせることになるとともに免疫力の乏しい人の生命を脅かすことがあることを知っておく必要があります。

2006年5月16日掲載

 水痘は皮膚に水疱ができるウイルス疾患で伝染力の強い病気です。元気な子どもがかかると軽くすむこともありますが、免疫力が低下した人や体力がない子どもがかかると重症化して生命にかかわることもあります。

 水痘の原因はヘルペスの仲間で水痘帯状疱疹ウイルス(水痘ウイルス)です。このウイルスは患者さんの上気道粘膜や皮疹の水疱中に多く含まれており、放出されたウイルスを上気道から吸い込むことで空気感染します。

 水痘ウイルスが上気道粘膜に侵入するとその場所で増殖するとともに所属のリンパ節で増殖して血液中に入ります。次いでウイルスは肝臓や脾臓でさらに増殖して、再び血液中にはいり全身に散布されます。全身に散布されたウイルスが皮膚に感染して水疱を形成して水痘が発病します。

 水痘の発疹は紅斑・丘疹・水疱・膿疱・痂皮(かひ=かさぶた)の順に出現します。発疹の出始めは小さい赤い発疹ですが、次第に中心に小水疱を形成して診断が明らかになります。水疱の内容が濁って膿疱となり、ついで頂上部分から黒いかさぶたができ始めます。水疱全体が痂皮になると水痘ウイルスは減少して伝染力を失います。

 水痘の潜伏期間は約2週間で、もっとも伝染力が強い時期は潜伏期間中で、発病直後から発病後数日間です。発病後は約1週間で治ります。発疹の数は200~300個出現すると言われます。重症の水痘では発疹の個数が多く全身に発疹が配布されます。  

 水痘の発疹は強いかゆみをともないますからひっかいて水疱を破ることもあります。これにより細菌の二次感染を起こすこともあります。

 水痘の伝染力は強く、集団内や家族内での発生にはとくに注意が必要です。母親の免疫は有効ですがウイルスに対する免疫量が少なければ新生児や乳児期早期でも水痘にかかることがあります。免疫力の乏しい時期にかかると重症化することがありますからとくに予防を心がけることが大切です。

2006年5月9日掲載

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