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予防接種の実施方法が急激に変化しています。第一線でワクチンを実施している小児科医でさえなかなか変更の内容を理解できないことがあります。今月は最近変更された予防接種についてお話ししたいと思います。
今回変更された予防接種の中でもっとも大切なものは麻疹(ましん)、風疹(ふうしん)ワクチンです。麻疹も風疹もかかってしまうと治療法がなく子どもにとっては大変重要な病気です。
麻疹は高熱にともなってせきや鼻水がひどく全身状態が侵される病気です。伝染力が大変強い疾患ですが、発病後3~4日して発疹(はっしん)が出るまで診断がつかない場合もありますから注意が必要です。また麻疹にかかると抵抗力が落ちますから、肺炎などの細菌感染による合併症も多くなり、重症の場合には死亡することもあります。
風疹は麻疹によく似た発疹が出る病気ですが、乳幼児がかかっても麻疹ほど重い症状が出ることはありません。しかし妊娠初期の女性が風疹にかかると、胎児が侵されて心疾患、難聴、白内障などの障害を持つ先天性風疹症候群として生まれてきます。
したがって麻疹も風疹も絶対に自然にかからせてはならない病気です。それだけに予防接種が大切な疾患と言えます。
これまで私たち小児科医はお誕生日を過ぎたらできるだけ早く麻疹ワクチンを受けるようにすすめてきました。麻疹ワクチンがすめば次に風疹ワクチンです。1歳3ヵ月までに麻疹、風疹ワクチンを終了するように指導してきました。
以上のような指導は全国の医師会や小児科医会が共同でキャンペーンを行いその結果、この数年に一定の成果を挙げています。日本全国で年間数十万人の麻疹患者が発生していましたが、ここ数年間に数万人まで発生数が減少しています。予防接種が普及すると麻疹は確実に減少するのです。
今回の予防接種の変更によって麻疹風疹混合ワクチンを1回で行うようになりました。やり方が変わっても、今までと同じようにさらに接種率を上げる努力が必要です。
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今月は発熱について考えています。
高熱が出ると「ひきつけを起こすのではないか」、「脳に障害を残すのではないか」、「すぐに下げたほうがいいのではないか」とよく聞かれます。
ふつうのかぜによる熱で脳に障害を残すことはありませんから、熱の出方を十分に観察して対応を決めても遅くはありません。しかし発熱に対する取り扱いが医者によって異なるため、患者さんを混乱させていることが多く見受けられます。
熱が出た場合にすぐに冷やしたり解熱剤を使用する必要があるのでしょうか。発熱の初期にはよく寒くてふるえる悪寒を経験することがあります。手足が冷たく汗は出ていません。このような時には、寒さに対してまず手足をくるんで保温します。
出始めの熱を下げる必要はありません。
多くのウイルス感染で見られる発熱は、ウイルスの増殖を抑え、免疫機能を活性化しますから、解熱剤を使用してこれらの働きを抑制することはむしろ有害に作用することがあり、注意が必要です。
解熱することは免疫機能を抑制する恐れがあるのです。
発熱と切り離せないのが解熱剤です。昔は家庭用常備薬の中にアスピリンがあって、発病初期に早めにアスピリンを服用すると、病気が早く治ると信じられていました。しかしアスピリンの使用は急性脳症(ライ症候群)の発生に関与していることが判明しました。現在ではかぜの治療にアスピリンを使うことはほとんどありません。その後インフルエンザ脳症の発生にボルタレンやポンタールという強力な解熱剤が関与していたことが明らかになりました。そのため現在、子どもの発熱に強力な解熱剤は使用されなくなりました。
かぜの熱に解熱剤を使ってもかぜが早く治るわけではありません。ときには有害であることも経験しました。私たち小児科医が、子どものかぜに解熱剤を使用しなくなるまでには長い年月と多くの犠牲を払ってきました。
現在、解熱剤は強い痛みに対して使用するか基礎疾患がありそれ以上の発熱に耐えられない場合などに限定する必要があると考えています。
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今月は発熱についてお話しています。
子どもは軽いかぜでも簡単に高熱が出ますから、熱の高さだけで病気の重症度を決めることはできません。ただし3ヵ月未満の乳児の発熱やそれ以上の子どもでも熱が非常に高い場合には注意が必要です。
子どもの発熱原因の多くはウイルス感染症によるものです。この中で最も多いのが呼吸器症状を示す普通感冒(上気道炎・気管支炎)、嘔吐(おうと)や下痢を示すウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)、発疹(はっしん)を示すものの代表が麻疹(ましん)、風疹(ふうしん)、水痘、手足口病、突発性発疹症などです。その他、夏かぜとしてヘルパンギーナやプール熱がよく見られます。
生後3ヵ月までの乳児は抵抗力がないためあまり熱が出ることはありません。この時期の発熱には重症の感染症が隠れていることがありますから、施設によっては全例入院の上で原因検索を行うことがあります。尿路感染症、肺炎、敗血症、化膿(かのう)性髄膜炎などを鑑別することが大切です。
また生後3ヵ月から3歳までの乳幼児の原因不明の高熱にはとくに注意が必要です。39.5度以上の発熱で、診察所見から原因が特定できない場合には血液検査(白血球や炎症反応)を行います。その結果、白血球数が著明に上昇している場合に一定の割合で重症の細菌感染症が隠れているとされます。重症細菌感染症の中には化膿性髄膜炎、急性喉頭蓋(こうとうがい)炎、化膿性関節炎、骨髄炎などの他に潜在性の菌血症などがあり、いずれも早期に判断して重症化を防ぐ必要があります。
私たち小児科医が発熱した子どもを見たときには問診と診察所見からおおよその判断の見当をつけ、不明な部分には検査し、できるだけ正確な診断をつけて治療を行います。
しかし検査上も異常が見つからないけれど「何かおかしい」と感じることがあります。医者だけでなく両親がこのような感じを訴えることもあります。このような場合には放置せずに厳重な経過観察の下に置きます。場合によっては入院して経過観察することもあります。反復して診察、検査をすると経過とともに重篤な疾患が明らかとなることがあるからです。
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発熱は子どもが救急外来を受診する原因疾患の第1位です。夜間の電話相談でも発熱に関する質問が多いものです。子どもが熱を出した場合、その発熱の原因疾患や治療法が明らかにされ、病気が治って解熱するまで両親は心配なものです。今月は子どもの発熱とその処置、解熱剤の役割などについて考えてみました。
子どもの発熱原因の大部分はかぜなどの感染症によるものです。特に乳幼児は体力や抵抗力が弱いのでかぜにかかると簡単に熱が出ます。小児科診療を行っていて緊張するのは、発熱を訴えて受診する大勢の子どもの中に、かぜに隠れてごく少数の重篤な疾患が隠れているからです。多くのかぜによる発熱はそのまま経過を見ていても自然に治るものがほとんどです。ごく少数の重篤な疾患を見逃さないためには、どの時期に専門医を受診するかの判断がとても大切なことです。
一般に子どもの体温は大人より高めです。乳幼児では新陳代謝が盛んであるために体温が高めになるのです。さらにからだが小さいために食事や運動、入浴、環境温度などの影響を受けて変動しやすいものです。
また体温は生体リズムの影響を受けて日内変動を示します。夜明け前の体温が最も低く、夕方に最高になりますが、子どもではこの変動幅が大きく夕方の体温上昇を発熱と間違うこともあります。朝・夕の体温を測定してグラフにしてみると経過がよくわかります。
また体温測定法や測定部位による差も無視できません。最近多く使用されている電子体温計は短時間で測定できて便利ですが、本来体温は水銀体温計で5分以上測定するのが最も正確であるとされます。電子体温計は予測値であって実際の体温とは0.2度くらいの誤差があるとされます。
一般に体温計は脇にはさんで使用しますが、口の中や耳(鼓膜)、肛門(こうもん)内で測定すると少し高めに出ます。
体温を比較するときには、測定法や測定部位を同じ条件にして比較することが大切です。
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インフルエンザはウイルスを原因とするかぜ症候群のひとつです。インフルエンザはその中でも乳幼児から老人まで、高熱をともない呼吸器系の合併症も多く重要な疾患です。また伝染力が強く、潜伏期間が短いために一度発生するとあっという間に流行が拡大する傾向があります。
以前はインフルエンザに効く薬がなく、多くのかぜに対するのと同様の対症療法しかありませんでした。最近はワクチンに加え検査キットや治療薬が使用できるようになり、日本のインフルエンザ治療は世界のトップになりました。
しかしインフルエンザもウイルス感染症のひとつですから、その取り扱いの基本は多くのかぜとなんら変わるところはありません。
かぜに対してできることはまず予防です。ウイルスの特徴を知り、予防に努めます。このウイルスは寒冷、乾燥を好む性質がありますから、保温と加湿を心がけます。ウイルスは鼻汁や喀痰(かくたん)に乗って手指や衣服に付着し、口や鼻の粘膜から侵入します。そのために手洗いやうがいが大切なのです。
体力や気力が衰えると感染症にかかりやすくなります。体力の低下とともに免疫力も低下します。もともと体力のない乳幼児や老人、基礎疾患を持つ人は感染を受けると発病しやすいものです。不規則な生活や睡眠不足、過労にも注意が必要です。
インフルエンザにかかったときにはまず安静と保温を心がけ、水分や栄養を十分取ることを考えましょう。
インフルエンザの多くは自然治癒する可能性のある疾患ですが、異常な高熱や意識障害、けいれんなどは緊急に医療機関を受診する必要があります。一般に熱の出始めには暖かく安静にして栄養と水分を十分与え休むことで病状を見極めることが大切です。
検査法や治療法が発達しても薬を飲みながら学校に行ったり仕事をしたりすることはもってのほかです。完全に治るまでは集団や社会生活から隔離します。体力の回復とウイルスが出なくなってから社会生活を再開します。
感染拡大を防ぐには、まず感染源の隔離です。これは他の重篤な感染症でも同じです。かかったらウイルスが排出されなくなるまで人との接触を避けることが原則です。