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メディアから受ける多くの情報は私たちの生活に欠かせないものになっています。しかし判断力の発達していない子どもにあまりに多くの情報が一度に流れ込むと、多くの情報を正しく処理しきれず、むしろ有害な作用を及ぼすことがあります。乳幼児期からのメディアとの長い接触は言葉の発達や対人関係を築くうえでじゃまになります。さらに思春期前にはメディアの内容を正しく判断する能力が獲得されておらず、メディアの内容に直接大きな影響を受けることがあります。視覚に直接訴える画像による暴力シーンなどは大きな刺激となります。テレビだけでなくビデオやテレビゲームでは暴力シーンが繰り返し流され、巻き戻しされ何度も視聴されることで大きな影響力となります。
子どもたちによる暴力事件にはテレビの影響が大きく働いていることが推測されます。暴力シーンを繰り返して見ることで青少年の間に攻撃的な振る舞いや、暴行行為に慣れが生じて、問題解決方法の一つとして暴力的行動を選択する傾向になると言われます。
日本の子どもたちのテレビ視聴時間は世界でもトップと言われます。テレビ視聴は一方的でしかも受動的な言葉の接触であるため、子どもは自ら考えて言葉で表現することが少なくなってその結果、言葉の遅れや表現力の低下につながります。注意力も散漫になり学力低下に関係すると考えます。
子どもたちは無防備にメディアと日常的に接触しています。メディアから流れる多くの情報がすべて真実であるとは限りません。商業的意味合いの濃い内容や社会的・政治的色合いの情報もあります。ある種の意図のもとに流される情報もあります。これらの情報の内容からその意味を読み取り、自ら分析し評価する能力を身につけなければなりません。
現在、日本のメディアは子どもに対する情報の制限をまったく行っていません。子どもがよく見る時間帯のテレビ番組やCMの内容にもなんの配慮もなされていません。しかし十分に研究し尽くされた良い番組もたくさんあります。メディアを利用した教育も効果的です。私たちは未来の日本を託す子どもたちには十分に吟味した良い番組を見せてやりたいものです。
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テレビが登場して約50年、今やテレビは我々の生活の一部になっています。テレビのほかビデオやパソコン、テレビゲーム、インターネット、携帯電話などIT関連機器は私たちの生活に欠かせないものになっています。しかしテレビは昔から勉強の邪魔になったり視力が低下したり、その有害性を指摘されてきました。最近ではテレビの長時間視聴やメディアとの接触が低年齢化していることによる影響が問題とされています。今月は子どもとメディアの関係についてお話します。
子どものテレビ視聴時間の長短が生活習慣に及ぼす影響調査の結果を見てみますと、テレビを見ている時間が長い子どもほど就寝時刻が遅くなる傾向があります。さらに就寝時刻や起床時刻が不規則で睡眠時間が短くなる傾向があります。またテレビ視聴時間が長い子どもほど朝食を食べないとか偏食であり、食事中にテレビがついている割合が多くなっています。
睡眠や食事は子どもの成長にとって大変重要な意味を持っています。テレビを見ることで夜更かしになり睡眠時間が短くなる、生活リズムが不規則になると、さまざまな心身の異常が発生してきます。睡眠時間の減少や睡眠リズムの異常は睡眠中に分泌されるホルモンの異常や体温リズムの異常を来します。その結果、日中の活動量の低下を介して学習意欲や認知能力の低下が認められることになります。また攻撃性やイライラ感の増強につながることもあります。子どもの心身の不調原因の中には睡眠不足が原因になるものがあると言われます。また食事中のテレビの視聴は食事に集中することが出来ないことから、子どもの食欲不振や健康状態にも大きな影響を及ぼすことが心配されます。
メディアは私たちの生活に欠かすことが出来ないものになっています。しかし子どもたちにとってメディアとの接触は家族とのだんらんや自然と出合う機会を奪う危険性があります。長時間メディアと接触することに対して私たちは常に子どもたちに有害ではないかとの危機意識を持って対応する必要があると考えます。
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今月は睡眠時無呼吸症候群についてお話ししてきました。睡眠時無呼吸症候群は睡眠中の呼吸障害を特徴とする疾患です。呼吸障害による睡眠障害が主な症状ですが、その結果として心身の不調をもたらします。成人では本症による睡眠障害のために時と場所を問わずに眠り込んでしまうほどの強い眠気が生じ、そのために仕事上のミスや事故につながることがあります。子どもでは学業の低下や集中力の欠如などが見られます。しかし子どもの中には睡眠障害があるにもかかわらず覚醒反応が起こらず、長期間の低酸素状態が持続することや、呼吸停止から生命にかかわる状態になることもあります。子どもの睡眠時無呼吸症候群はそれほど珍しいものではありませんから注意が必要です。
睡眠中に呼吸障害を来すのは睡眠時無呼吸症候群に限ったものではありません。鼻かぜや鼻炎のときに鼻づまりがひどくなると眠れなくなります。胸郭や横隔膜の呼吸運動は見られるのに上気道に閉塞があって呼吸障害が起こるのが閉塞型の無呼吸です。上気道の閉塞を来す疾患として最も多いのは口蓋扁桃(へんとう)肥大やアデノイド増殖症です。また生まれつき顎(あご)が小さいとか舌が巨大であって咽頭(いんとう)のすき間が小さくなることも原因になります。脳性まひ、ダウン症、甲状腺機能低下症なども呼吸筋の緊張低下が原因となって無呼吸を呈しやすいと言われます。
上気道の閉塞は程度が軽ければ体位の変換で症状が軽減されることもあります。慢性炎症に対しては抗ヒスタミン剤、消炎剤、去痰(たん)剤や抗生剤での治療効果が期待できる場合もあります。閉塞が高度で血中の酸素濃度低下が著しい場合には手術も考慮する必要があります。アデノイド・扁桃摘出術や口蓋垂軟口蓋咽頭形成術によって狭い咽頭腔の拡大を試みることもあります。また高度の肥満が原因になっている場合には減量をすすめます。
また未熟児や神経筋疾患を持つ子どもでは軽い鼻づまりなど突然の無呼吸を引き起こして生命に危険が及ぶことがありますので普段から無呼吸の有無に十分注意しておく必要があります。
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呼吸は人の生命活動に必要な生理現象ですから、私たちのからだは眠っているときでも呼吸運動を続けています。呼吸運動は呼吸中枢に支配されて自動的に行われていますから、意識の有無にかかわらずに運動し続けることができます。また呼吸は意識して速くしたり遅くしたり、深くしたり浅くしたり、自分の意思でもある程度コントロールすることができます。睡眠中の呼吸が障害されると生命にかかわるだけでなく、睡眠が十分に取れなくなることで、日常生活に支障を来します。
新生時期から生後1~2ヵ月までの乳児で睡眠中の呼吸を観察すると、速くなったり遅くなったりしてとても不規則であることがわかります。急に速くなったかと思うとゆっくりになって少しの間、止まっていることもあります。呼吸が不規則なときには睡眠の深さはレム睡眠かノンレム睡眠でも浅い睡眠のときです。ときには眠っているのか起きているのか区別がつかないこともあります。睡眠の深さと呼吸の規則性には密接な関係があります。睡眠が深くなると呼吸数は減少して規則的で安定した呼吸になります。新生児期には大人や年長児に見られる深い睡眠はほとんど持続することはありません。したがって呼吸運動は常に不安定なものになります。生理的に深い睡眠が見られるようになるには生後2~3ヵ月以降です。したがって安定した規則的な呼吸が出現するのはこのころ以後になります。
呼吸運動は発達にともなって大きく変化します。とくに未熟児の呼吸は在胎週数が小さいほど呼吸中枢は未熟でしばしば睡眠中の無呼吸を起こします。無呼吸発作は突然起こりチアノーゼやけいれん発作を引き起こすことがあります。当然このような無呼吸発作は生命予後や神経学的後遺症の発生に大きな影響を及ぼすことになります。
また乳児突然死症候群の発生にも睡眠中の無呼吸が関与している可能性があります。突然死は無呼吸が起こっても覚醒反応が起こらず死に至るものと考えられています。新生児期から乳児期早期にしばしば睡眠中の無呼吸を呈する場合には、睡眠中の呼吸状態だけでなくチアノーゼの有無や食欲、元気があるかどうかにも十分気をつけておく必要があります。
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睡眠時無呼吸症候群は睡眠障害のひとつです。最近、運転手の居眠り事故の原因疾患として話題になりました。一般に本症は肥満した成人に多い病気と考えられていますが、小児の睡眠時無呼吸もそれほど珍しい疾患ではありません。成人にとっても子どもにとっても睡眠時の無呼吸は臨床的に重要な意味を持っています。今月は睡眠と呼吸の関係について考えてみたいと思います。
睡眠時無呼吸症候群はその原因から中枢性無呼吸と閉塞性無呼吸に分類されます。中枢性無呼吸は呼吸中枢の異常によって起こるもので睡眠中に呼吸運動が見られなくなる状態です。閉塞性のものは睡眠中の呼吸運動はあるのですが、上気道の閉塞のために気道が閉塞されて呼吸障害を呈するものです。成人の場合には閉塞性無呼吸の割合が多く、肥満型の中年男性に多い傾向があります。
夜間睡眠中に無呼吸が起こると苦しくなって覚醒反応が起こります。つまり眠ると呼吸が出来なくなって覚醒してしまい眠れなくなるのです。激しいいびきをかくこともあります。また夜間睡眠中の無呼吸は内臓に大きな負担がかかり、高血圧などの合併症を引き起こすことになります。その結果、起床時の頭痛、日中の強い眠気、うつ状態などを訴えることになります。強い眠気のために仕事の能率が低下するだけでなく、大事な仕事中に居眠りをして事故を起こすこともあります。仕事上のミスは社会的、経済的に大きな損失を及ぼすと考えられます。子どもの場合には成長障害や成績の低下などが見られます。
睡眠時無呼吸症候群を本人が自覚することは少なく、家族が激しいいびきや呼吸停止によって気付くことが多いと言われます。子どもでは肥満が原因になるものよりも、顎(あご)が小さいとか扁桃(へんとう)やアデノイドの肥大がある場合、筋肉疾患で筋緊張低下にともなうものなどが多いとされます。
成人の無呼吸の基準は10秒以上続く無呼吸が1時間に5回以上あることとされます。子どもの無呼吸はこの基準には必ずしも当てはまりません。年齢や随伴症状を考慮して無呼吸の判断を行います。睡眠時無呼吸症候群が疑われた場合には専門家による精密検査が必要であることは言うまでもありません。