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県民の皆さまへ

 食事は生命活動を維持し健康増進のために、また同時にからだを作るためにも欠かすことができないものです。しかし食事には栄養を摂取するという生理的な機能だけでなく、精神的、社会的、文化的、教育的な機能などのさまざまな働きがあり、それぞれが重要なものです。今回は食事の持つさまざまな機能についてお話しします。

 人の食事が動物の餌と違うのは単なる栄養の摂取にとどまらず、人には食欲や好き嫌いがあり、これらは精神や心理状態によって大きな影響を受けるということです。食事が楽しければ食欲が増し、大勢と一緒に食事をすれば同じものを食べてもおいしく感じられます。反対に必要な栄養素だけを摂取するための食事や、食欲だけを満たすための食事では満足を得ることはできません。また家族で一緒にする食事には家族団らんやしつけをする役割があります。子どもは大人と一緒に食事をすることで、なにをどれだけ食べれば良いのかを学びます。食欲をコントロールし、正しい食事の習慣をつけるのです。このことは食事を通して健康を維持増進するためにとても大切なことなのです。

 さらに家族とともに食事をすることや学校給食で大勢が一緒に食卓を囲むことは、社会的なコミュニケーションの場として大切な機会です。人は人とともに食事をすることで人間関係の絆を強めます。一緒に食事をすることで人と仲良くなることができます。最近、子どもだけで食事をすることが増えてきています。仕事が忙しくて子どもと一緒に食事をすることができないとか塾やクラブで子どもだけが家族と別々に食事をする傾向があるようです。必要な栄養を摂取することや食欲を満たすことだけが食事の役割ではありません。からだのために必要な栄養素を過不足なく摂取することはもちろん大切ですが、家族と一緒においしい食事を楽しく食べることはもっと大切なことだと考えられます。食事の持つ意味を考えてみたいものです。

2004年10月19日掲載

 子どもは病気になると食欲がなくなり、どのような食事を与えればいいのかわからなくなります。とくに発熱や下痢、嘔吐がある時には何を与えても食べてくれず困ります。また病気の中には食べてはいけないものや無理をしてでも食べた方がいい場合もあります。病気が長引くと食事量とともに体力が落ちて病気の治りが悪くなることがあります。今月は食事の意味や子どもの食事習慣、食事と栄養について考えてみました。

 私たちは毎日の食事を取ることで必要な熱量を供給して生命活動を維持しています。生命活動を維持するのに必要な最低限の熱量を基礎代謝と言います。基礎代謝は年齢、性別によって決まりますから、新陳代謝が活発な乳幼児期には基礎代謝も多くなります。人の1日必要熱量は基礎代謝と、生活の中で行われる運動の強度、成長期の体重増加による付加熱量を加えて算出されます。1歳前後で体重が10kgくらいの乳幼児では1日の必要熱量は約1,000Kcalですから、成人の必要熱量2,000~2,500Kcalに比べると随分多くの熱量を必要とします。これは乳幼児期には相対的に基礎代謝が大きいことや体重増加にともなう付加熱量が大きいことによります。

 栄養必要量は熱量だけでなくそれぞれの栄養素については蛋白質、脂質、各種ビタミン類、食物繊維、ミネラルなどについて必要量が定められています。乳幼児の各栄養素の必要量は成人に比べると相対的に大きく、成長にともなう栄養の必要量が大きいことがわかります。食事は毎日することですから、各栄養素の必要量を過不足なく毎日摂取することが大切です。これを怠ると成長するにしたがってその過不足による弊害が大きくなります。

 食事は生きていくのに欠かすことはできません。単に生命活動を維持することだけでなく健康増進のためには毎日の各栄養素を量だけでなく質的にバランスよく摂取することが大切です。乳幼児期からよい食事習慣をつけたいものです。

2004年10月12日掲載

 血尿と蛋白尿を来す疾患の代表は腎炎です。腎臓の働きは糸球体という所で血液をろ過し、ろ過された液を尿細管で再吸収し、これを尿として体外に排出することによって、身体に不必要な物質を排泄するとともに必要な物質を吸収することで、体液の組成や濃度、酸塩基平衡などのバランスを一定に保つことです。急性糸球体腎炎になると糸球体の働きが障害されて血尿や蛋白尿が見られるとともに血液の生化学的なバランスや酸塩基平衡が崩れて体調の異常が出現します。

 急性糸球体腎炎は溶連菌感染症にともなって出来た免疫複合体が糸球体に沈着することによって、糸球体が障害されて発病します。腎炎の発病は溶連菌感染の後1~6週間、平均2週間くらいで起こります。患者は溶連菌感染を受けやすい4~10歳が中心で男児に多い傾向があります。

 急性腎炎の初期には肉眼的血尿が見られることがあり、尿量の減少、高血圧、浮腫などの症状が見られます。吐き気をともなう腹痛や倦怠感、食欲不振、頭痛なども見られます。まれに高血圧によるけいれんや意識障害が見られることがあります。腎炎が軽い場合には症状に気付かない場合もあります。  急性糸球体腎炎の経過はおおむね良好ですが、発病初期には尿量が減少して、体液の貯留で高血圧や高K血症(K=カルウム)など危険な症状が出る場合があります。この時期に適切な治療がなされれば、急性期は1週間ほどで終わります。尿が順調に出始めると血圧が正常化し、浮腫も消失、血液の生化学的な異常も正常化しますが、血尿が消失するには時間がかかります。

 急性腎炎の治療の原則は安静、保温、食事療法の3つです。身体の負担を出来るだけ少なくして腎臓の血流量を確保すること、食事は食塩と水分、蛋白質を制限して高血圧の管理を行います。急性期を過ぎれば安静度や食事の制限を徐々に解除します。血液生化学の異常が消失し、尿蛋白が減少すれば入院は必要でなくなりますが、血尿が続く間は経過観察が必要です。

 最近、典型的な急性糸球体腎炎を見ることが少なくなっています。抗生物質の使用など様々な原因が考えられますが、腎炎が減少したのではなく軽症化したのだと言う人もあります。症状がないからと言って安心せずに必要な検査や適切な治療を受けることが大切です。

2004年9月28日掲載

 血尿には一見して赤い色の肉眼的血尿と検査ではじめてわかる顕微鏡的血尿があります。肉眼的血尿は赤色から暗赤色で赤ワイン色、コーラ色、コーヒー色、ピンク色などと表現されます。しかし赤い色の尿がすべて血尿であるとは限りません。赤い尿の中には尿酸のように体内で作られる物質や解熱剤などの薬剤や食品中に含まれる色素の影響で赤くなるものもあります。したがって赤い尿を見た場合には必ず尿を採って血尿かどうかを確認する必要があります。また試験紙は血色素やミオグロビンという物質にも反応するので顕微鏡で赤血球の存在を確認する必要があります。また赤血球がわずかである場合には検査してはじめて血尿とわかる微少血尿つまり顕微鏡的血尿があります。この場合、尿の外観では血尿があるのかどうかはわかりませんから健診などで尿検査をして血尿を発見することが大切です。血尿があっても症状がない場合には放置される危険性があります。微少血尿でも慢性腎炎など将来症状が出てくる可能性のある疾患が隠れていることがあり、これらを見つけるためにも学校や健診での検尿が重要なのです。

 血尿の原因には腎臓そのものによる病気が多いのですが、腎盂(じんう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道などの異常によるものもあります。腎臓は尿を作る臓器です。腎盂、尿管、膀胱、尿道は腎臓で作った尿を体外に排出する経路です。その経路に感染症や腫瘍、結石、異物、炎症などがあれば血尿が見られます。腎臓そのものの病気では腎炎が最も多く、高血圧や浮腫といった症状がある場合には急性腎炎を、明らかな症状がなくても血尿に蛋白尿を合併している場合には慢性腎炎を考えます。健診で発見された多くの慢性腎炎は将来の腎機能を考慮して、早期に正確な診断をつけて注意深い経過観察しておく必要があります。

 腎臓は普段の機能はその4分の1くらいしか働いていないとされます。言い換えれば4分の3の機能が障害されて初めて症状が出ます。その時には取り返しのつかない状態になっていることがあります。健診などで異常が見つかった時には必ず再検査を受けて、必要な精密検査の機会を逃さないようにしたいものです。

2004年9月21日掲載

 学校や乳幼児の健診で尿検査をすることがあります。検査項目には蛋白・糖・潜血(血尿)を調べることが一般的です。今月は検尿の意義、腎臓の働き、さらに蛋白尿や血尿が見つかった場合に考えておかなければならない腎臓病についてお話ししたいと思います。

 検尿は比較的手軽な検査ですから健診でも医療機関でもよく行いますが、子どもの尿を採ることはそれほど簡単ではありません。とくにおしめをしている乳幼児の採尿は採尿バッグを使って尿が出るまで待ちますが、尿が採れるまでに時間がかかることが多いのでなかなか面倒なものです。また正確な検尿のためには清潔な状態で尿を採る必要がありますから尿を採るだけでもなかなか大変です。

 尿蛋白の中には病的な蛋白尿と正常人でも見られる良性(生理的な)蛋白尿があります。良性の蛋白尿はもちろん治療の必要はありません。良性蛋白尿には機能性蛋白尿と体位性蛋白尿があります。前者には運動、発熱、ストレス、寒冷、けいれん、脱水などで起こるものがあり正常人でも見られます。体位性蛋白尿には起立性のものや、からだを弓なりにそらせたときに腎臓を圧迫して出る蛋白尿などがあります。しがたって尿を採る時の条件を厳しくしなくてはその判定を誤ってしまうことになります。尿蛋白の判定は早朝尿で行うもので、夕方の蛋白尿は陽性であっても病気ではないことがあります。また発熱時や運動後、寒冷刺激を受けた後の蛋白尿は腎臓病のない人にも見られます。体位性蛋白尿は身長が急速に伸びる時期によく見られます。これらはすべて良性の蛋白尿ですから、早朝安静時尿で検査すれば陰性になります。反対に早朝尿で蛋白の陽性が持続する場合には病的な尿蛋白と考えられ、精密検査が必要とされます。

 病的な蛋白尿の代表は腎臓病ですが、高度の蛋白尿の場合にはネフローゼ症候群を疑い、血尿をともなうものは腎炎を疑います。しかし蛋白尿や血尿を示す疾患は腎臓病だけではなく全身の様々な疾患を考えておかなければなりません。症状のない尿異常についても早期に正確な診断をつけることが大切です。

2004年9月14日掲載

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