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1964~1965年に沖縄で風疹が大流行し、その後で多数の先天性風疹症候群の子どもが生まれました。1977年から中学生女子を対象にしたワクチンを開始しましたが、風疹はその後も1995年まで5年ごとに繰り返し流行しています。1995年の予防接種法改正で風疹ワクチンの接種対象者が中学生女子から12ヵ月~90ヵ月の男女に変更になりました。これは風疹ワクチンの目的が先天性風疹症候群を予防することから、風疹の流行を阻止することに変わったためです。中学生女子だけのワクチン接種では風疹の流行を阻止することが出来ないことがわかったのです。予防接種法改正以後、乳幼児全員に接種することで5年ごとに見られていた風疹の全国的な流行は見られなくなったのです。
しかし今年は全国各地で風疹の局所的な流行が見られて話題になっています。現在、乳幼児の風疹抗体保有率は80%くらいとされています。さらに予防接種法改正時に接種もれになった世代が成人となりに妊娠可能年齢になっていることが問題です。春先に風疹が流行した年の秋に先天性風疹症候群の出生が増加することはこれまでの流行年の統計から明らかなっています。風疹に対する免疫のない人の割合が増加すると必ず地域的な流行が起こります。乳幼児に対するワクチン接種で大流行はなくなりましたが、これで風疹そのものがなくなった訳ではありません。風疹は麻疹に比べれば症状が軽く、流行および先天性風疹症候群の発生を阻止するという目的を持たなければついついワクチン接種の必要性を忘れそうになります。風疹に対する免疫のない人の割合が増加すれば今年のような局地的な小流行が全国各地で再々発生し、その数ヵ月後には先天性風疹症候群の子どもたちが生まれる可能性があることを知らねばなりません。
風疹ワクチンは95%以上の効果があり大変に有効なワクチンであるとされます。その副反応も軽微です。風疹ワクチン接種対象者でまだワクチンを受けていない人はもちろん、接種対象の時期を逃した人でも風疹の流行を阻止し先天性風疹症候群の発生を防ぐためにワクチンを受けるようにしたいものです。
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妊娠中の女性が風疹にかかると胎児も風疹にかかります。かかった時期が早ければ風疹ウイルスが胎児の組織細胞を害して、出生時にさまざまな症状が現れます。これを先天性風疹症候群と言います。先天性風疹症候群は先天性の疾患ですが、女性が妊娠中に風疹にかからなければ発生しません。従ってこの病気はワクチンによって予防可能な異常です。1995年の予防接種法改正時にワクチン接種率が低くなった時期があります。現在、この年齢層は風疹に対する抗体保有率が低くなっています。従って今後しばらくはこの年齢層が妊娠可能年齢になっており先天性風疹症候群の発生が問題になっています。
風疹が春から初夏にかけて流行した年には先天性風疹症候群は秋から冬に発生することが多くなります。妊娠中に風疹にかかると潜伏期の後半に母体の体内ではウイルス血症が起こり次いで胎盤から胎児に感染し、胎児のウイルス血症から胎児の組織器官が感染します。この時、胎児が妊娠の前半で免疫能力が未熟な状態ですと慢性の持続感染が成立し、細胞分裂が抑制され組織器官に永続的な障害をもたらします。この永続感染は新生児期にも一時的な風疹の症状を現すばかりでなく時には生後1年くらいウイルスを排泄し続け、新たな感染源にもなります。
先天性風疹症候群の代表的な症状は目、心臓、耳の症状です。眼科的症状としては白内障や網膜症、循環器症状として動脈管開存症や肺動脈狭窄症、耳鼻科的症状として感音性難聴がみられます。その他には精神神経学的症状として行動異常、髄膜脳炎、精神遅滞などが挙げられています。これらの症状は妊娠のいつ頃に風疹にかかったかによって出る症状が決まっています。妊娠時期の早いほど症状は強く、妊娠1ヵ月以内なら50%以上に、妊娠2ヵ月以内では20~30%に、妊娠3ヵ月以内なら5%に先天性風疹症候群を認めると言われます。これは風疹ワクチンでも起こる可能性があります。ワクチン接種2ヵ月以内は妊娠する必要があります。
妊娠する前には自分が風疹に対する免疫を持っているのか知っておくことが大切です。
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今年は風疹が全国各地で流行して話題になっています。昔、風疹ワクチンの接種が行われる前には、数年毎に風疹の流行が見られていました。その後、中学生女子にだけ集団で風疹ワクチンの接種が行われるようになりましたが、風疹の流行はなくなりませんでした。さらにその後、1995年の予防接種法改正でワクチン接種の対象が12ヵ月から90ヵ月の男女に行われるようになりました。また接種法も個別接種になりました。その結果、風疹の大流行は見られなくなりました。このシステム変更時にワクチンの接種率が大きく低下しました。この接種率の低い時期に子どもだった人達が現在、成人になって妊娠可能年齢となっています。風疹に免疫のない人が妊娠中に風疹にかかると先天性風疹症候群の子どもが生まれてくる可能性が高くなります。今月は風疹の問題点について考えてみました。
風疹はワクチンが普及する前には春から初夏にかけて4~5年毎に流行する病気でした。現在でも風疹に対する治療薬はありませんが、合併症さえなければ命にかかわるような症状が見られることはありません。主な症状は発疹です。熱が出たり首のリンパ腺が腫れたりしますが一般状態が悪化することはほとんどありません。ただし年齢によって症状の強さが異なると言われます。一般に乳幼児の風疹は軽く、年長児や成人では重くなり、発熱を伴うことなどが多くなります。
風疹の診断は発疹によってつけられます。これは簡単なように見えますが、インフルエンザのような迅速診断キットがありませんから確定的なものではありません。他の原因による発疹が紛れ込んでくる可能性があります。とくに初夏の夏かぜウイルスによる発疹や麻疹、突発性発疹症などと鑑別が必要となります。従って、臨床的に風疹と診断を受けた人の中にはまったく風疹に対する免疫を持っていない人が含まれている可能性があります。さらにじっさいに風疹にかかった人でも2回かかる人があり、その頻度は3~10%あるとされます。ワクチン接種者でも風疹にかかる人が14~18%あると言われており注意が必要です。
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麻疹ワクチンが定期予防接種に加えられたのは1978(昭和53)年で、それ以降、徐々に麻疹の大流行は見られなくなりました。しかし最近でも麻疹は全国多くの地域で小流行を繰り返しながら時々全国規模の流行が報告されています。そして1年間に50名くらいの子どもたちが麻疹で命を落としていると言われます。また最近では成人の麻疹の報告が増加しています。成人の麻疹は入院を必要とするような重症の麻疹が多いと言われます。
前回、お話ししたように麻疹にかかるとその症状の重さで体力を消耗し、抵抗力の低下による合併症のために、乳幼児の多くが入院治療を必要とします。麻疹は誰でもかかる病気ですが、麻疹ウイルスに対する有効な治療法がなく、誰もが無事に治るとは限りません。一度かかると抵抗力を獲得して終生、麻疹にはかからないと言われます。しかし麻疹ワクチンで免疫をつけた人は数年で抗体が減少して、ワクチンを接種していても麻疹にかかる人が出てきています。麻疹の大流行がなくなるとワクチンで免疫をつけた人がその免疫を強化する機会がなくなり、自然の麻疹に出合ったときに麻疹に対する免疫がなくなってしまっていることがあるのです。従ってワクチンで免疫を獲得した人と麻疹にまだかかっていない人の割合が増加してきますと時々麻疹の流行が見られるようになるのです。
従来、生後半年以内の乳児は麻疹に対する抗体を持っており麻疹にはかからないとされてきました。しかし、麻疹ワクチンで免疫をつけた世代が親になるにしたがい、新生児が母親から受ける麻疹に対する移行抗体は非常に少なくなっています。母親の免疫がなければ新生児でも麻疹にかかる可能性はあるのです。成人の麻疹が今後さらに増加することも予想されます。従来、麻疹は子どもの病気でしたが今後は若い世代を中心とした成人の麻疹が発生するものと考えておかねばなりません。
麻疹ワクチンの問題は現在の1回接種で接種率を向上させることが最も大切ですが、将来に向けて2回接種の準備をしておかなければならない時期にさしかかっているのです。
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麻疹の怖さについては今までさんざん述べられてきましたが、まだまだ麻疹に対する正しい知識を持っている人は少ないのではないでしょうか。また医者の中でも実際の麻疹を経験した人が少なくなっています。小児科医でも麻疹の診断は難しい場合があります。今週は典型的な麻疹の症状についてお話ししたいと思います。
麻疹の接触から発病までの潜伏期間は10日前後です。最初の症状はカタル症状と呼ばれ、一般の風邪の症状と変わりはありません。38~39度の高熱、激しいせきや鼻水など上気道症状、目やになどの結膜炎症状が加わりだんだん強くなります。下痢や腹痛など消化器症状も多く見られます。発疹出現前のこの時期を前駆期とかカタル期と呼び、2~4日間持続します。この時期は判断がつきにくい上に、感染力が最も強い時期です。
カタル期の終わり頃に口腔内、頬粘膜の内側に白色の少し隆起して周囲が赤くなった小さな斑点が出現します。これがコプリック斑です。コプリック斑は麻疹に特有な斑点であり、これを見つければ麻疹の診断がつきます。この斑点が出現して1~2日前後で麻疹特有の発疹が出現します。
麻疹の発疹は耳の後ろから出現して頚部、前額部から体幹部や上肢へ、急速に全身に広がります。コプリック斑が出現する時期に熱は一時少し下がりますが、全身に発疹が出現する時には再び上昇して持続します。麻疹の発疹は鮮紅色扁平ですが時間経過とともに少し盛り上がり融合していきます。次いで暗赤色になり色素沈着します。発疹出現時期を発疹期と呼び3~5日間持続します。カタル期から発疹期に麻疹は感染力が強いのです。
発病後7~10日後に合併症さえ起こしていなければ回復期に入ります。解熱とともに発疹は出現した順に消失しますが、発疹の色素沈着はしばらく残ります。カタル症状も次第に軽くなっていきます。
以上のように普通の麻疹でも1週間くらい高熱と激しいせきなどが持続しますから、乳幼児が麻疹にかかると脱水症を起こすことが多く入院治療が必要となることが多くなります。絶対に麻疹は予防が必要なのです。