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今年の春から徳島市内でも麻疹の小流行があり、その後も県内で麻疹の流行が続いています。徳島市内の流行は小学校の同じクラスの子ども数名で、その子たちはいずれも麻疹ワクチンを接種していませんでした。その後、同じ地域で成人の麻疹が見られるなど小流行が続き、さらに周辺に広がりを見せています。
麻疹は伝染力が強いために、麻疹に抵抗力を持たない人が麻疹ウイルスに接触すると大部分の人が発病すると言われます。麻疹ワクチンの普及によって昔のような大流行はなくなりましたが、一度麻疹が流行し始めると、ワクチンを受けていない人の多くが麻疹にかかってしまいます。麻疹にかかっていない人が増えてその上、麻疹ワクチンの非接種者が多くなると社会全体の麻疹に対する抵抗力が低下して、麻疹の小流行は繰り返して発生するようになります。このような小流行をなくして世の中から麻疹を撲滅するためにはワクチンの接種率を徹底して高めることと、さらにワクチンの2回接種が必要になるとされます。
麻疹ワクチンが予防接種法で定期接種に加わったのは1978(昭和53)年です。この時には接種時期は12ヵ月から24ヵ月までと定められました。しかしその後の麻疹発生の年齢分布を見ると、もっとも発生頻度が高いのは1歳代で、次いで6~11ヵ月、2歳の順になります。従ってワクチンの接種時期を24ヵ月までとしたのでは遅すぎるのです。少なくとも1歳を過ぎれば出来るだけ早い時期に接種するのが望ましいと考えられます。最近の厚生労働省の指導でも12ヵ月から15ヵ月の間に接種することが勧められています。
現在、多くの小児科医は乳幼児健診や就学時の健診、小児科受診などの機会をとらえて麻疹ワクチン接種の有無を確認し、その必要性を指摘して未接種者にはワクチン接種を勧めています。
麻疹は昔から誰でもかかる病気であり、一度かかると終生免疫が得られることから、麻疹についての正確な情報を持っていない人が多いものと思われます。今月は古くて新しい問題、麻疹についてお話ししたいと思います。
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今月は夏かぜの代表であるアデノウイルス感染症とヘルパンギーナについてお話ししてきました。発熱を主徴とする夏かぜの中には抗生剤療法が必要な細菌感染が隠れている場合がありますが、とくに溶連菌感染を見逃さないようにすることが大切です。
溶連菌感染症は幼児から学童に好発する細菌感染症で咽頭炎、扁桃炎、中耳炎、肺炎、皮膚化膿症などを起こすことが知られています。中に高熱と全身の発疹を来し猩紅熱(しょうこうねつ)と言われるものもあります。また溶連菌感染症にかかった時に十分な治療をせずに放置すると後に急性腎炎やリウマチ熱など大きな病気の原因になることもあります。
溶連菌は直接接触や経口摂取、気道分泌物の飛沫などで感染します。溶連菌による咽頭炎・扁桃炎の典型的な経過は、潜伏期間2~5日で急激な39度前後の発熱、咽頭炎、頭痛、腹痛で発病します。扁桃腺や咽頭は腫れて真っ赤になります。舌乳頭も腫れ上がり苺舌と呼ばれる状態になります。半日から1日すると身体に発疹が出現して全身に広がります。合併症がなければ3~5日の経過で治ります。咳や結膜充血がないので一般のかぜやプール熱とは区別でき、外来で簡単に出来る迅速検査キットがあります。
治療は抗生剤療法です。ほとんどの抗生剤に効果がありますが、短期間で治療を中断すると溶連菌は再び咽頭から出て再発することになります。ペニシリンで10日から2週間の投与が必要とされます。
かぜの原因の80~90%はウイルスであると言われます。発熱だけを主症状とするウイルス感染症には抗生剤は効果がありません。現在、ウイルスに効果がある薬剤はインフルエンザや水痘など一部の疾患に対するものだけです。従来、かぜに対して二次的な細菌感染の予防に抗生剤を多く使用してきましたがこれも意味がないと考えられるようになりました。むやみに抗生剤を使用することで最近、抗生剤の効かない細菌(耐性菌)が増加して問題になっています。
夏かぜの中には自分の体力・抵抗力で治さなければ治療薬のないウイルス疾患が多く、規則正しい生活や適切な食生活を心がけて乗り切りたいものです。
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夏かぜの特徴は高熱と咽頭痛ですが、その代表的な疾患はプール熱とヘルパンギーナです。ヘルパンギーナはのどに小さな水泡が出来て、これが破れて潰瘍になって強い痛みを訴えます。高熱と咽頭痛で十分な食事が取れなくなると脱水症状を起こすこともあり、また高熱に伴って熱性けいれんを起こすこともあり注意が必要です。
ヘルパンギーナはエンテロウィルスと呼ばれるウィルスで引き起こされます。その潜伏期間は2~4日です。突然の発熱で始まり咽頭痛を訴えます。口を大きく開けてのどの奥を見ると、口蓋弓の上部に周囲が赤くなった水泡が認められます。この水泡は破れて潰瘍になりそれに伴い咽頭痛や頭痛、嘔吐を認めることもあります。高熱と特徴的な咽頭の所見があれば診断は難しいことはありません。高熱は1~5日間、口内疹は4~5日で自然に消退します。
この疾患の原因であるエンテロウィルスはのどから侵入して腸管で増殖し、その一部が血液中に侵入し、血液を介して各臓器に広がり、そこで組織障害を起こして臨床症状を呈すとされます。増殖したウィルスはのどからも糞便中にも排泄されます。唾液中のウィルスや糞便内のウィルスが接触または飛沫により伝染します。エンテロウィルスの中にはエコー・コクサッキー・エンテロ(狭義の)ウィルスが含まれ、ヘルパンギーナ以外には手足口病、無菌性髄膜炎、ポリオなどの原因ウィルスとして知られています。手足口病も夏に多い感染症のひとつですが、最近は夏以外の季節にも発生することがあります。これらの感染症は一度かかれば免疫が出来ますが、同じ病気でも違う型のウィルスであれば何回もかかることがあります。
ヘルパンギーナは高熱や咽頭痛を来し、乳幼児にとってはつらい病気ですが現在のところ治療法はありません。手洗いや患者の糞便の処理などに注意し、できるだけ感染予防につとめなければなりません。もしかかった場合には水分や栄養の補給に注意し脱水症にならないようにしなければなりません。
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初夏に流行する発熱を主微とするウイルス感染症は一般に夏かぜと呼ばれ小児にとって重要な意味を持っています。夏かぜの代表にはプール熱とヘルパンギーナと呼ばれる2種類の感染症が挙げられます。今月はウイルス感染の代表である2つの疾患とその関連疾患について、さらに溶連菌感染症など治療法が異なる細菌感染症についてお話ししたいと思います。
プール熱はアデノウイルスによる咽頭結膜熱と呼ばれる疾患で、発熱、咽頭痛、結膜充血を特徴とします。夏季に流行し、幼児から学童によく見られます。伝染力が強く、飛沫感染やプールで接触するなど水を介してうつります。潜伏期間は5~7日で突然39~40度の高熱、頭痛、食欲不振で発病し、咽頭痛、結膜充血、下痢などが見られます。発熱は3~5日間持続します。眼症状としては涙目や目やに、眼痛などがあります。夏季に見られる結膜炎の中で発熱と咽頭炎をともなうものは本症を疑います。
アデノウイルスはいくつかの血清型に分類されており、その型によって臨床症状に特徴が見られるとされます。呼吸器感染症として咽頭炎・へんとう炎を起こして高熱を出すもの、気管支炎や肺炎を起こして重症化するもの、咽頭結膜熱(プール熱)の他に流行性角結膜炎や出血性結膜炎などの眼疾患を来すもの、乳幼児の嘔吐下痢症など消化器疾患を来すもの、出血性ぼうこう炎など泌尿生殖器疾患を来すもの、髄膜炎や脳炎など中枢神経疾患を起こすものなどさまざまな疾患を起こすものが知られています。
咽頭炎やへんとう炎を来すアデノウイルス感染症と鑑別すべき疾患は細菌感染、とくに溶連菌による咽頭炎・へんとう炎です。最近ではアデノウイルスも溶連菌も迅速検査キットを用いれば、短時間で簡単に検出することができます。アデノウイルスによるへんとう炎には抗生剤は無効です。診断確定のための検査をすることで不必要な抗生物質の投与を防ぐことが出来ます。
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脱水症とは体内の水分が病的に減少した状態で、普通は水分だけの喪失にとどまらず、NaやKなど電解質や炭酸塩などが一緒に失われるので体液の電解質濃度や酸塩基平衡のバランスが崩れます。大量の水分喪失が起これば循環不全に陥ることもあります。
小児が成人に比べて脱水症を起こしやすいのは、体内の水分の占める割合が大きいからです。体内の水分の中で細胞内水分はあまり変動しませんが、これに比べて細胞外水分は毎日、激しく出入りします。細胞外液は循環血漿と間質液からなり、成人では体重の20%くらいであるのに対して、乳児では体重の30%であり、小児の細胞外水分量の割合が多いのです。体の水分は常に出入りしていますが、体液の電解質や浸透圧、酸塩基平衡は常に一定に保たれています。成人の1日水分摂取量は約2,000mlです。体重7kgの乳児でも約1,000mlの水分を摂取します。乳児では細胞外水分の約2分の1が毎日、入れ替わりますが、成人では約7分の1しか出入りしません。ですから少しでも水分の出納にバランスの変化が生じた場合には脱水症を起こしやすいのです。小児は常に病気にかかりやすくて、水分摂取の減少や水分喪失の影響を受けやすい状態にあります。嘔吐や食欲不振のために水分が摂れない時や、下痢や発汗などで水分が喪失する時には、簡単に水分の出納がマイナスになってしまうのです。
脱水症を起こしているかどうかの評価は健康な時に比べてどのくらい体重減少があるかを調べます。3~5%の体重減少であれば軽度の脱水症、6~9%の体重減少があれば中等度の脱水、10%以上の体重減少があれば重症の脱水症と考えます。嘔吐や発熱に伴って水分摂取量が減少し、また下痢や発汗による水分の喪失で脱水症を疑う時には、体重減少の程度を知っておけば輸液療法が必要かどうかを判断する情報のひとつになります。軽症の脱水症であれば経口的な補液で治療が可能とされます。
嘔吐下痢症などの脱水症を起こす可能性のある疾患にかかったときには水分、電解質、ブドウ糖を十分に摂取するようにし、脱水症を予防することが大切です。